マーケの目標を達成させるリード獲得戦略 潜在/顕在リードの黄金比率の考え方と具体策

マーケの目標を達成させるリード獲得戦略 潜在/顕在リードの黄金比率の考え方と具体策

※本記事は、2024年5月23日に開催されたセミナーを記事化した内容です。

■登壇者
松本健吾(株式会社PLAN-B マーケティング部 「SEARCH WRITE」マーケティング責任者)
京都大学卒。2020年に株式会社PLAN-Bに入社。SEOコンサルティングやネット広告運用などのWebマーケティング支援に5年ほど従事。現在はSEOツール「SEARCH WRITE」やCVR改善ツール「SEARCH WRITE LEAD」などのプロダクトマーケティングを担当。オウンドメディアPINTO!」の責任者として、自社ツール活用やSEOの深い知見を活かし、獲得リード数を3倍以上に伸ばした実績を持つ。

村尾 慶尚 (株式会社シャノンマーケティング部 部長)
株式会社シャノンのマーケティング責任者。「SHANON MARKETING PLATFORM」を自ら活用してマーケティング課題を解決している。

内藤 太郎 (株式会社ガラパゴス 執行役員)
広告代理店で15年、化粧品・人材・金融・BtoB商材ほか、様々な業種のクライアントのマーケティング支援活動にAE(営業)・シニアストラテジックプランナーとして従事。マーケティングデザイン領域のペイン解消を志し、2019年10月にガラパゴス入社。現在、マーケティングのプロによるAIを活用した広告クリエイティブ制作・改善サービス「AIR Design」のMarketing・Sales部門の統括を担当。


松本:今回は、「マーケ目標を達成させるリード獲得戦略、潜在/顕在リードの黄金比率の考え方と具体策」というテーマでご登壇いただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

マーケターの悩みとして、「質の高いリードをなるべく多く獲得したい」という思いはありながら、すぐに受注につながる質の高いリードを獲得するための手法は限られており、「どこまで潜在層に広げるべきか?」や、「本当に潜在層から受注は取れるのだろうか」と迷われることがあると思います。

本日はそういったお悩みを解決していければと思います。

潜在層と顕在層のバランスとは

松本:まずは潜在リードと顕在リードの獲得のバランスが崩れてしまったり、そもそものバランスをどう考えるべきなのかというお話からお伺いしていきたいと思います。

まず初めに、PLAN-Bでいろいろと施策を試していく中で、潜在リードと顕在リードの獲得バランスが失敗してしまった話をしておければと思っております。

PLAN-Bでは基本的にチャネルごとに、セミナーやホワイトペーパーなどのチャネルごとで獲得したリードがそのまま受注に繋がっているのかを考えていました。

この振り返り方をしていくと、受注に近いリードを獲得できる施策のみが高く評価されるようなことになってしまいます。

いわゆる「顕在層=今すぐ層」を獲得していくところでは良かったのですが、その手前にある、初回の接点を作るのに貢献していた施策や、初回接点を持った後に自社サービスに興味を持ってもらう間の期間において貢献していた施策というのが本来はあったはずなのに、それが高く評価できないという形になってしまいました。

今回のテーマの通り、潜在リードと顕在リードの獲得のバランスが崩れてしまった一例としてはこういった事態があるかなと思っています。

そうなると、顕在層の獲得コスト上がっていき、リード数も頭打ちになってしまうという悩みが訪れます。

この辺りはお二方のご意見なんかもぜひお聞きしていきたいなと思っています。村尾様では、バランスや崩れてしまうタイミングなどいかがお考えですか。

村尾様:ありがとうございます。実は私たちも全く同じ失敗をしておりました。デジタルに少し強いマーケターのありがちな失敗なのかなと思っています。私も会社のマーケティング責任者になったときに、当時行っていた展示会やセミナーを全部やめて、途中解約までして止めて、そのお金を全部デジタル広告に突っ込んだんです。

そうして、デジタルの中でも特にリスティング広告の比較検討系のワードに入れていくと、資料請求がめちゃくちゃ伸びて、昨対比で4.5倍ぐらいに伸びていき、すごく順調に思っていました。

しかし、資料請求の数は増えましたが、受注数は増えなかったんですね。

のちにお客様にお話を聞いていくと、顕在層と潜在層について、「誰かが課題を顕在化させている」ということがわかりました。

資料請求が増やすことで顕在化している人だけを上手くすくい取ってたつもりでも、当時外資系の大手競合企業様が課題を顕在化させる動きを取っていらして、その多くはそことの相見積もりとしての資料請求であり、なかなか受注につながらなかったという状況でした。

改めて「マーケットにどう入っていくのかという本質的なところを見失うと、潜在層と顕在層のバランスが崩れて、マーケットを拡大しビジネスを伸ばせない」という状況に陥るということを、過去私もやってしまっていたなと今聞いて思い出しました。

獲得偏重での限界

松本:ガラパゴスさんでいくと広告施策がメインでご支援をなさっているのかなと思いますが、過度な獲得偏重だったりとか、獲得のみを高く評価することにより失敗することはありますか。

内藤様: そうですね。そのバランスというより、顕在リードだけを獲得していくことで数字を伸ばしていこうとすることの限界は間違いなくあって、結局マーケティングで数字を伸ばすというのは、買ってくれる人の数や契約してくれる人、コンバージョンしてくる人の数を増やすという行為だと思います。

買ってくれる人の「数」を増やすというのは、買ってくれる人の「種類」を増やすことだと思っています。顕在層だけを狙っている場合、買ってくれる人の種類を自ら絞ってるということもあるわけです。

「潜在リード=受注できない」として諦めてしまうこと自体がバランスの崩壊を招いてしまい、結果、コンバージョンが頭打ちになるような状況に自ら追い込んでいるみたいなことがよくあると思います。

松本: なるほどですね。受注を伸ばしたいと思ったときに、まず獲得からと思ってしまいがちですが、そこだけを狙うと逆に未来を狭めてしまっているということですね。

内藤様: そうですね。おっしゃる通りだと思います。

潜在層から受注を生むためには何をすればいい?

松本:潜在リードから受注を生み出せるようにはなりたいけれども、実際何をどうやっていくと良いのかというのが難しいなというのも感じています。潜在リードから時間をかけて育成しながら受注につなげていく形になるのかなとも思っていますが、コツだったりポイントみたいなところは何かあったりしますか。

内藤様: まず一つあるとすると、「潜在リード=時間がかかるものだ」と決めつけないことだと思います。基本的には大きく二つのルートで考えた方がいいと思っています。

  • 潜在リードだったが、一発で顕在化してコンバージョンに至るというルート
  • そこで検討段階に入らずとも、長期では検討に入るというルート

この二つで考える必要があると思っています。

前者がすごく重要です。前者の潜在リードというのはどういう状態かというと、「ニーズが顕在化していないだけ」なんです。

ということは、ニーズに対して気づきを届ける必要があります。気づきを届けるにはどうすればいいか、という話になってくるんだと思いますが、このポイントはBtoCでもBtoBでも圧倒的に事例です。

わかりやすいのが、例えば少し太っている人がいるとしましょう。その人は「ダイエットしよう」と今その瞬間は思っていないわけです。でも自分が太ってることは認識をしています。

その人たちに一番効くのは、フィットネスジムの価格とかそういう話じゃなくて、こういう姿になれますよということを見せることです。「こんな風に変われる」と思わせる気づきを届けるのです。

これが一番有名なライザップのCMなんです。ああいったものを見せることによって一気に欲求が高めています。

松本:なるほどですね。潜在層と一口に言っても2パターンがあるんですね。気づきがあればぱっとそのまま購買に至るようなパターンとそれ以外で時間をかけて次に繋がっていくというそのパターン、2パターン考えられそうということですね。

今潜在層を2パターンで捉えるという話だったかと思うのですが、この潜在層から受注を生み出すという点では、シャノン様はどういったお考えですか。

村尾様: ありがとうございます。実は私たちはここ全く同じ考えでして、やっぱりよくお客様とお話をするのですが、「潜在層=リードタイムが長い」「顕在層=リードタイムが短い」というような一対一対応ではないですよねというお話はよくさせていただいています。

例えば昨日お話したお客様で、半導体を販売されているお客様だと、顕在層だけど時間がめちゃくちゃ長いんですよね。

「潜在層=リードタイムが長い」と考えてしまうことはすごく危ないなと思っています。こういう層を狙うと、ターゲット外がたくさん入っちゃうんですよね。「いつかは成果が出るんじゃないか」「芽が出るんじゃないか」みたいな気持ちで頑張っていても、それそもそもターゲット外の人に時間を使ってしまっていて受注は生まれない、ということが起こりえます。

ですので、私たちとしては、潜在層から受注を生み出すには、潜在層だけどすぐに訴求に触れたらコンバージョンや商談になる人から始めるのがいいのかなと思っています。

私たちもちゃんとデータを見ていくと、初回接点からすぐに商談/受注になる人もいらっしゃれば、時間をかけて商談/受注になる人もいらっしゃいますので、ここは各社で実数を見ながらやっていく必要ももちろんあるのですが、これから受注を生み出すにはというと、まず潜在層という言葉に「足が長い」と騙されずに、潜在層だけど足が短いという方からスタートするのが順番的にはいいのではないかなというのをすごく痛感しております。

松本:
確かに「潜在層=リードタイムが長い」「顕在層=リードタイムが短い」というような、何となくの1対1の構図というのは思い描いてらっしゃる方多いのではないかなと思います。

顕在層の獲得が頭打ちになったときに、次に「潜在層からの受注=時間がかかる人から頑張って受注を取ろう」と思うのは落とし穴だということですね。

潜在層からも受注を生むためにコミュニケーションを分ける

松本:具体的に受注を作るためには何をやっていくと良いでしょうか?

内藤様:まず潜在層と顕在層に対して一緒のプロモーションしないってことですね。要は決め手になる理由とかきっかけになる理由が全く違うためです。営業シーンに置き換えれば、異なる2人が来ても全く同じ営業するっていうことで、そんな売り方では売れないじゃないですか。ということは複数の異なる顧客層に同じ訴求をするマーケティングは売れないマーケティングだってことだと思うんですよね。まずはコミュニケーションをしっかりと切り分けて考えましょうっていうのが一つ。

もう一つは、Who-What-Howというフレームワークの「Who(=どんな人が、どんな悩みやニーズを抱えているのか)」を明確にすることが重要です。そこからスタートだと思います。

松本:なるほどですね。ありがとうございます。

顧客層が変われば提供すべき価値も変わるというのでいうと、営業との連携が必須かと思いますがそこのずれがあってうまくいかないとかってのも結構あったりするもんなんですかね。

内藤様:往々にして起こると思います。「Who×What」を分類しているつもりでも、営業での落としどころが結局いつも同じ一つのWhatになっているという話だったり、情報が連携されていない状態になると、マーケが想定したWhatに落とし込むことができない、といった問題はやはり起きますよね。

松本:マーケ部門としてはどんな関わり方をしていったり、どんな風に主導していくと良いのでしょうか?

村尾様:新しい切り口を見つけるときは、事例からまず作っていくっていうのはいいのかなと感じておりまして、やっぱり事例となるお客様がいると、営業の方も自信をもって売れますし、むしろ売りやすいので勝手に新しい切り口で売れるようになっていきます。

具体的な事例:展示会で潜在層から受注を生む

展示会で潜在層と顕在層のリードを獲得する上で重要なポイントについて、株式会社シャノンの村尾様に事例を交えてお話しいただきました。村尾様からは展示会についてのお話です。

※こちらのパートは内容の要約となります。


■潜在層と顕在層の割合
展示会では、新規リードでも既存リードでもホット(1ヶ月以内に商談化すると思われる見込み客)、ウォーム(半年以内に商談化すると思われる見込み客)、コールド(それ以外)という区分けで割合はあまり変わらないことがわかりました。展示会における既存リードと新規リードの比率

■展示会の効果
村尾様の会社での受注のうち、35%が展示会ですぐに商談・受注に至っています。展示会では潜在層でもすぐに顕在化しやすい見込み客が来てくれるため、マーケティングオートメーション(MA)を知らない人でも説明次第で興味を持ってもらえるのが利点です。ただし、展示会だけでは難しい部分もあるため、ウェビナーなども組み合わせて受注まで持っていくことが重要です。最終接点の前にウェビナーで接触済み

■名刺獲得数を重視
展示会でのリード獲得では、名刺獲得数が非常に重要だと村尾様は強調されました。ホットリードやウォームリードの数も結局は名刺獲得総数に比例するため、とにかく多くの方に声をかけ、名刺を集めることを現場ではKPIとして設定しているそうです。ホットリードを狙い撃ちするよりも、数の力で確率的に獲得していく方が効果的でした。

当日の現場では名刺獲得総数を
KPIにする

■集客のための工夫
名刺獲得数を増やすために、コンパニオンやインサイドセールス担当を巻き込み、集客に特化してもらうことを心がけたと村尾様。営業担当と2~3人一組の「バディ制」を取り入れ、コンパニオンが来場者を止めて名刺を受け取ったら、すぐに営業担当が接客できる体制を整備。また、コンパニオンが会場の外の通路まで出て積極的に声をかけることで、名刺獲得数を大幅に増やすことができたそうです。

■その他のTips

・バーコードリーダーで名刺を取ることで、時間帯ごとの獲得数がわかり、集客状況の分析に役立ったバーコードの時間帯集計

・集客が落ち込む時間帯を見計らってお笑い芸人によるブースセッションを実施

漫才で集客

・スタッフのシフトを調整し、ランチ時の人手不足を解消

バーコードの時間帯分析をして、シフトの調整をする

・1日3回名刺を締めて、その日のうちに状況を可視化目標値の達成率は中締めで確認する

・展示会のHOT名刺は商談化率が45~50%程度なので、名刺情報の活用が重要

・サンクスメールの返信ページに資料請求のリンクやQ&Aのコンテンツを設置。それらのクリックを商談見込み度合いの判断材料にサンクスメールでフェーズの再判定をする

・有望リードには資料を先に郵送し、後追いの電話でフォローすることで高い応答率とアポ獲得数を達成郵送冊子をフックにしてフォローする

具体的な事例:ターゲットに合わせたコミュニケーションで自分ゴト化させる

株式会社ガラパゴスの内藤様からは、ターゲットに合わせたコミュニケーションで潜在層からも受注をできるようにした事例について解説いただきました。

※こちらのパートは内容の要約となります。


■クライアントの課題
内藤様のクライアント企業である、看護師の派遣求人サイトを運営する会社の事例をご紹介いただきました。月額2,000万円の広告費を投じていたものの、PDCA サイクルを回すノウハウがなく、ペルソナや価値訴求が明確でないという課題を抱えていました。

クライアント概要

■顕在層と潜在層でLPを分けて訴求
そこで内藤様の会社では、顕在層向けと潜在層向けでランディングページ(LP)を分けて制作。顕在層向けには条件や働き方など、意思決定の決め手となる要素を訴求し、潜在層向けには「いつか転職するかもしれないあなたへ」「無理なく職場復帰」といったメッセージを打ち出しました。潜在層向けLPと顕在層向けLP

■施策の効果
この取り組みにより、もともとCV数100件、CPA1万円だったものが、顕在層向けではCVが増えCPAが下がり、潜在層向けでは新たな獲得チャネルとして機能。最終的にCV数は140件となり、CPAも若干下がる結果となりました。

■ペルソナを明確にすることの重要性
潜在層の攻略では、ペルソナを明確にすることが何より重要だと内藤様は強調します。潜在層は顕在層よりも攻略が難しいため、しっかりとペルソナの背景情報やインサイトを捉える必要があります。内藤様の会社では、生成AIを活用してペルソナを量産。プランナーとクライアントの知見を合わせて、3つのペルソナを選定し、それぞれのペルソナに合わせたLPを制作しています。潜在層も顕在層と同様に、ニーズがバラバラな3人のペルソナをご提案

 

■潜在層が反応しやすいポイント
潜在層が反応しやすいポイントは、「自分ごと化」「トライアル感覚の訴求」「前向きで明るい未来を想起させるデザイン」など。例えば「育児でブランクがある人」というペルソナであれば、ワークライフバランスへの不安を抱えているはずなので、「無理なく復帰」といったメッセージが刺さります。現職に不満があり転職悩み中の若年女性
育児でブランクがあり復帰したいけど不安な主婦

■ペルソナ設定とテストの繰り返しによる効果
こうしたペルソナ設定とそれに基づくテストを繰り返すことで、潜在層の獲得効率を高めることができたのだそう。また、最も売上に繋がるペルソナを発見できたことで、そのペルソナにフォーカスしたCRMやMAの施策も打ち出せるようになったとのこと。これはペルソナを明確にしたことの副次的なメリットだと内藤様は述べています。顕在層と潜在層に分けてペルソナを作り
クリエイティブでテストを繰り返し、
勝ちパターンを探求した。

■ペルソナに刺さる鋭い訴求の重要性
最後に内藤様は、広く一般的な話をするのではなく、ペルソナに刺さる鋭い訴求をすることが肝要だと主張。「求人サイトなら年収訴求より、比較検討要素やNo.1訴求が効果的」といった具体例を挙げ、ペルソナに合わせてバリエーションを持たせながら動線を最適化することが、リード獲得数の向上に繋がるとアドバイスしてくださいました。勝ち組企業の手法

まとめ

  • 潜在層と顕在層の受注について、顕在層の獲得だけに偏った施策を行うと、未来の見込み顧客創出ができなくなり、頭打ちが訪れる。
  • 潜在層は2種類で捉え、「①課題が顕在化していないだけでコミュニケーション次第ですぐに受注につながる層」と、「②受注まで時間がかかる層」に分けて考える。
  • ①に対しては、事例を見せることが効果的。
  • 展示会でも、広告でも、相手の状況に合わせて伝えるべきメッセージを変えていく。その幅を広げていくことで顕在層の種類が増え、結果として顕在層の数が増える。

 

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