SEOとは?SEO対策で上位表示する効果的な施策と事例
SEO対策
2024.10.08
2021.08.18
2024.05.31
コロナウィルスの登場以降、オウンドメディアによるコンテンツSEOなどのコンテンツマーケティングに関するお問い合わせを多くいただくようになりました。強引なテレアポなどのアウトバウンドな営業手法の効力が以前よりも弱まっている中、改めてコンテンツマーケティングが注目されているようになっているのだと感じます。
コンテンツマーケティングは注目を集めている割には、あまり正しく理解されていない概念なのではないでしょうか。この記事では、コンテンツマーケティングの単なる言葉の定義だけではなく、その背景、実践方法まで、幅広く取り上げます。コンテンツマーケティングについて理解し、実践に移すきっかけになれば幸いです。
また、これまで、多くのお客様とコンテンツマーケティングでお付き合いをさせていただきました。用語や理論についてのみならず、個人的な経験からの学びも取り上げています。
コンテンツマーケティングは奥深く、本記事の執筆にあたり、複数の書籍を参考にしています。本記事の最後にまとめていますので、更に詳しく知りたい方は、そちらもご覧ください。
コンテンツマーケティングについて、原点であるジョー・ピュリッジによる定義を確認し、よく混同されてしまうインバウンドマーケティング、コンテンツSEOとの違いを整理します。
コンテンツマーケティングの生みの親であるジョー・ピュリッジ氏が立ち上げたコンテンツマーケティングインスティチュート(以下、CMI)は下記のようにコンテンツマーケティングを定義しています。
Content marketing is a strategic marketing approach focused on creating and distributing valuable, relevant, and consistent content to attract and retain a clearly defined audience — and, ultimately, to drive profitable customer action.
【筆者訳】コンテンツマーケティングとは、有益で、適切な、一貫性があるコンテンツを作成・配信することで、明確に定義されたオーディエンスを引き寄せ、関係性を維持する戦略的なマーケティング手法である。その目的は、利益につながる顧客の行動を促すことにある。
重要な点は、「有益で、適切な、一貫性があるコンテンツをつくること」、「オーディエンスを引き寄せ、関係性を維持すること」「利益につながる顧客の行動を促進すること」です。
逆に、注意すべき点は、コンテンツの形式や配信する経路を限定していないことになります。例えば、ソーシャルメディアマーケティングであれば、コンテンツ形式はそのメディアの形式に従わなければならず、流入経路も当然そのメディアからになりますが、コンテンツマーケティングはその限りではありません。ソーシャルメディアマーケティングなどもコンテンツマーケティングの一部として扱われます。
コンテンツマーケティングと似た言葉に「インバウンドマーケティング」があります。インバウンドマーケティングを提唱し始めたHubSpot社は、インバウンドマーケティングを下記のように説明しています。
Inbound marketing is a business methodology that attracts customers by creating valuable content and experiences tailored to them. While outbound marketing interrupts your audience with content they don’t always want, inbound marketing forms connections they are looking for and solves problems they already have.
【筆者訳】インバウンドマーケティングとは、価値のあるコンテンツや顧客に合った体験を創出することで、顧客を引き付けるビジネス手法である。アウトバウンドマーケティングが望まれないコンテンツでオーディエンスの邪魔をしてしまうのに対して、インバウンドマーケティングはオーディエンスが望む関係を構築し、オーディエンスが抱えている問題を解決することができる。
共通点としては、インバウンドマーケティングもコンテンツマーケティングと同じく、顧客を惹きつける(attract)手法として説明されています。また、コンテンツ形式や配信経路に関しても、コンテンツマーケティング同様に限定していません。
よくある勘違いが、「コンテンツマーケティング=コンテンツSEO」と考えてしまうことです。
前述のコンテンツマーケティングの定義の通り、コンテンツマーケティングは流入経路を限定していません。それに対して、コンテンツSEOはSEOの手法の一つであり、流入経路は当然ながら自然検索からになります。コンテンツSEOは流入経路として検索エンジンを活用したコンテンツマーケティングの手法の一つであると言えるでしょう。
注意しなければならないのは、自社のオーディエンスのインターネット上の行動目的は検索のみでしょうか?例えば、ニールセンの調査によると、インターネット利用時間のうち、検索に費やす時間は4.0%であるとされています。
インターネットの利用目的は検索のみではありません。また、オーディエンスがインターネットに接続していない時間もあります。当然ながら、コンテンツSEOでは検索したオーディエンスにしかリーチできません。
また、自社のオーディエンスはそもそもインターネットでアプローチできる層でしょうか?下記はNHK放送文化研究所の調査によるメディア別毎日利用者の調査結果です。メディアごとの利用者も年代によって、異なることがわかります。
コンテンツマーケティングでは、明確に定義されたオーディエンスにアプローチします。結局は、自社のオーディエンスがどのような行動を取るのかによって、適切なコンテンツの配信手法が異なります。コンテンツSEOをコンテンツマーケティングのすべてと勘違いしてしまうと、本来配信するべきその他の手法を見逃してしまうので、注意が必要です。オーディエンスが取る行動の理解は後述するカスタマージャーニーによって実現できます。
ただし、コンテンツマーケティングの背景には、Googleなどの検索エンジンの普及や、それによる買い物前・営業パーソンとの接触前に検索するというユーザー行動の変化(後述するZMOT)があるため、コンテンツSEOは間違いなくコンテンツマーケティングにおけるメインの手法となります。自社のユーザーが検索によって調査・行動をするのであれば、まずはコンテンツSEOに注力することを弊社としてはおすすめいたします。
コンテンツマーケティングが注目を集めるようになった背景には、
があります。
インターネットが普及して、消費するよりも多くの情報が世の中に生み出されるようになりました。入手できる情報量も入手経路も限られていた時代と異なり、情報が溢れている状況において、一方的になりがちな従来の広告手法ではオーディエンスにメッセージが届きにくくなってきていると考えられます。
前述と同じNHK放送文化研究所の調査によると、「今の社会は情報が多すぎる」という人が、全体で8割を超えています。また、「自分が知りたいことだけを知っておけばいい」という人は全体で3割程度ですが、SNS利用者数が多い39歳以下の男女をみると全体よりも高い数値になっています。
39歳以下の男女のうち「今の社会は情報が多すぎると思う」に対して「あてはまる」と回答した方ほど、「自分が知りたいことだけ知っておけばいい」という質問項目に対しても「あてはまる」と回答する傾向がみられました。情報の過多感と情報を限定する意識は何らかの関係があると考えられます。
世の中には情報が溢れており、情報を入手する経路も限定されていない現在。ユーザーは、必要とする情報だけを自ら取りにいくことができます。より深く理解するために、「ZMOTという概念」「検索エンジンの使われ方」について説明します。
2011年にGoogle社はZMOT(Zero Moment of Truth)という消費者行動における新しい概念を提唱しました。
ZMOT以前、従来の購買における消費者意識のモデルは、2000にP&Gが提唱したFMOT(First Moment of Truth)とSMOT(Second Moment of Truth)といわれる概念が重要視されていました。FMOTとは、「店頭での陳列棚を見て、最初の3-7秒でどの商品を買うのかの意思決定をする」という考え方であり、SMOTとは、「購買後の体験がブランドへのパーセプション(認識・知覚)を形成し、継続して購買するかどうかの意思決定をする」という考え方です。
店頭に訪れる前には、外部からの刺激を受けるため、これらをまとめると従来の消費者意識のモデルは、下記のように3段階に分けられて考えられていました。
インターネットの普及と検索エンジンの進化に伴い、消費者の行動様式も変わりました。Google社が2011年に発表した「Winning the Zero Moment of Truth eBook」によると、これまで店頭にて購買の意思決定をしていた消費者が、店頭を訪れる前にウェブサイトなどで情報収集を行い購買の意思決定をしているとの調査結果を発表しました。この店頭を訪れる前の情報収集の段階をファーストの前のゼロの段階という意味でZMOTとして提唱しています。
ZMOTにおいて、消費者はどのようなソースから情報を得ているのでしょうか?下記は、同調査にて、各ステージでの情報ソースをまとめたものになります。ZMOTにおいて、消費者は検索エンジンや比較サイト、ブランドサイトや商品レビューサイトなどを利用していることがわかります。
ZMOTでは、消費者は購買の意思決定をするための情報収集をしている段階なので、企業側が伝えたいことを一方的に伝えるのではなく、消費者側が求める情報を伝えるコンテンツを用意してあげて、消費者側に見つけてもらい購買を支援する姿勢が重要となります。
また、同調査において、84%の方がZMOTでの情報収集が意思決定に関わると回答しており、購買刺激やFMOTと同程度か、それ以上に重要な瞬間であると言えるでしょう。
ZMOTはB2Bでも例外ではないです。Google社の「The Changing Face of B2B Marketing」という記事によると、B2B顧客は、お目当ての企業を見つけるまで平均して12回の検索を行っている、また、企業の営業担当との最初の接触前に意思決定プロセスの57%を終わらせているとされています。
B2Bにおいても、ZMOTが意思決定プロセスにおいて重要な瞬間であり、企業側は顧客の情報収集を支援することが重要になります。
ZMOTにおいて、重要なソースとなる検索エンジン。検索クエリを検索意図(検索インテント)ごとに分類すると、Infomational(情報型)、Navigational(案内型)、Transactional(取引型)の3つになると言われています。「Determining the informational, navigational, and transactional intent of Web queries」によると、Infomational(情報型)に分類される検索クエリは全体の80.6%を占めるとの結果が出ています。
特定のブランド・企業を見つけるまで、人々は検索エンジンを活用して、情報収集を行っています。繰り返しにはなりますが、自社の顧客も例外ではなくZMOTにて検索エンジン上で情報収集を行っているのであれば、コンテンツマーケティングの中でもコンテンツSEOから取り組むことをおすすめします。
トリプルメディアとは、多様なメディアを3つに分けてマーケティングコミュニケーションを設計する考え方です。ペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディアの3つに分類されます。
もともと伝統的なペイドメディアのスペースや時間の制約のもと、オーディエンスの状態に関わらず一方的なメッセージの発信しかできなかったため、望まれないコンテンツを配信してしまうアウトバウンドな手法が主要なマーケティングコミュニケーションのやり方でした。
デジタル時代のマーケティングコミュニケーションでは、オーディエンスの状態に合わせて、必要な情報を必要なタイミングで入手できる状態をオウンドメディア上でつくるという手法が可能になりました。
ペイドメディアとは、自社が料金を支払い、コンテンツを配信してもらうメディアです。自社はインプレッション数やアクション数(クリックや購買など)の対価を支払います。
ペイドメディアにはテレビや新聞、雑誌、ラジオなどのマスメディアや、検索エンジンでのリスティング広告やディスプレイバナー、ソーシャルメディアの有料広告などのデジタルメディアが含まれます。
メリットとしては、対価を支払うことで短期間に広範囲のオーディエンスにコンテンツを配信することができます。デメリットとしては、ペイドメディアは配信の枠や時間の制約があり、コミュニケーションが一方的になりがちです。その制約の中での創意工夫により、効果的にメッセージを伝えることが重要になります。
ただし、情報を入手する手段もその情報量も限られていた時代と異なり、人々が自ら情報収集を行い、同時に膨大な情報を浴びせられている現在では、ペイドメディアの影響力が相対的に低下していると考えられています。
オウンドメディアとは、自社が保有し、コンテンツを管理運営するメディア全般を指します。ECサイトやブランドサイト、コーポレートサイト、メルマガなどが挙げられます。
紙での発行物なども含みますが、オーディエンスが必要とする情報を必要なタイミングで入手してもらうという考え方に立つと、Webメディアとの相性が非常によいです。オーディエンスがまさに必要としている瞬間となる検索エンジン上の自然検索からのトラフィックを獲得したり、MAを活用してオーディエンスが必要とするだろう情報を配信したりと、よりオーディエンスが望む形でのコミュニケーションが可能となるからです。
料金を支払えばトラフィックを獲得できるペイドメディアと異なり、オウンドメディアはオーディエンスが望むタイミングで望む情報を入手できるようにしなければなりません。自社ユーザーが検索行動を取るのであれば、オウンドメディアを構築し、自然検索からのトラフィック獲得を最優先に注力するべきだと考えています。
また、コンテンツマーケティングはオウンドメディアのことだとの勘違いもよく見受けられますが、コンテンツマーケティングはメディアを限定していません。第三者ではなく自社でコンテンツを所有することと、オウンドメディアでコンテンツを所有することはイコールではないので、狭い範囲でコンテンツマーケティングを考えてしまわないように注意が必要となります。
アーンドメディアとは、自社や自社ビジネスについて、第三者、主にユーザーによって創出された口コミや推奨のおかげで獲得した報道や露出を指します。自社が料金を支払った上での、第三者による露出はペイドメディアに含まれます。
多くの場合、アーンドメディアは単独で機能するわけではなく、ペイドメディアやオウンドメディアでの配信の結果として生じるものになります。
ユーザー生成のコンテンツは自社の意思によるものではありません。他メディアと異なりメッセージをコントロールしにくく、ネガティブなメッセージも広がるリスクもあります。しかしながら、ユーザーの自由意思に任されて生み出されているコンテンツであることが、情報の信頼性を担保しています。
また、コンテンツが適切なインフルエンサーにまで到達すれば爆発的な拡散も期待できます。この爆発的な拡散は、多くの場合、ペイドメディア・オウンドメディアでの活動を通じて発生するものです。したがって、トリプルメディアでのマーケティングコミュニケーションをバラバラに考えるのではなく、関連を持つコンテンツマーケティングとして取り組むべきです。
情報が溢れ、ユーザーが自ら情報を入手する時代において、一方的に枠・時間に割り込みメッセージを伝えるのではなく、必要な情報を必要なタイミングで届けて、段階的にユーザーの行動を促進することで、最終的に自社の利益につなげる。そのために、適切なトリプルメディアを組み合わせて、コンテンツマーケティングを展開していくべきだと考えられています。
コンテンツマーケティングが重要視されている背景に続いて、弊社オウンドメディア「PINTO!」を軸にしたコンテンツマーケティングを実例として、メリット・デメリットについて紹介します。
弊社は2017年よりオウンドメディア『PINTO!』を運営しており、自然検索経由の流入とコンバージョン(リード獲得)ができています。
下記のグラフは2017年4月のオウンドメディア立ち上げから2020年末までの自然検索経由のセッション数の推移です。具体的な数値は伏せさせていただきますが、長期の取り組みにより、多くの方に訪問していただけるメディアに育っています。
また、単に訪問していただいているだけでなく、弊社側の利益としては毎月多くのリードを自然検索経由のみで獲得しています。割合としては、全チャネルで獲得できているリード数のおよそ2/3を占めており、ペイドメディアに頼らずに与件の創出が成り立っています。
ペイドメディアにてコンテンツを配信した場合、対価を支払わない限り、配信がなされません。対して、オウンドメディア・アーンドメディアでは、そのメディアが閉じられない限り、コンテンツは残り続けます。特に、オウンドメディア上で自然検索経由の流入を狙いコンテンツを配信する場合、多少のアップダウンはありながらも、長期的には積みあがったコンテンツが資産となり、右肩上がりで集客・コンバージョン数が増え続けていくことになります。
コンテンツマーケティングは、長期的な成功を収めるためには、多くの時間と労力が必要です。コンテンツを作成するだけでなく、正しいプラットフォームを選択し、ターゲット市場を確実に獲得するために必要なマーケティング戦略を構築する必要があります。
コンテンツを継続的に更新し、新しいユーザーを引き付けるために、時間と労力を投入する必要があります。例えば、ブログを更新するために、定期的にコンテンツを制作する必要がありでしょう。
また、コンテンツを拡散するために、SNSを利用して情報を多くの人に見てもらえるようにする必要があるため、多くの時間がかかります。
コンテンツマーケティングは、企業が顧客に向けて情報を発信するための有効な手段ですが、コストをかけて実行しても、それを回収するまでに時間がかかるというデメリットがあります。
例えば、企業がコンテンツマーケティングを行うために、多くの資金を投入してWebサイトを構築したとします。そのWebサイトを運営するために、さらに多くの資金を投入して、広告を出したり、コンテンツを作成したりする必要があります。
しかし、これらの費用を回収するまでには時間がかかります。また、コンテンツマーケティングを行うために必要なスキルや知識を持つ人材が必要であるため、コストをかけて人材を雇用しなければならない場合もあるでしょう。
次に、コンテンツマーケティングを取り入れた方が良い会社の特徴を4つ紹介します。
新たな販路を獲得したい会社は、コンテンツマーケティングを取り入れた方が良いです。新たな販路を獲得するために、消費者に有益な情報を提供し、消費者の購買意欲を高めることを目指す上でコンテンツマーケティングは効果的な施策です。
コンテンツマーケティングの具体的な方法としては、企業が消費者に向けて、製品の使い方やメンテナンス方法などの有益な情報を提供する方法があります。また、企業が消費者に向けて、新製品のリリース情報や新しいサービスを提供することで、新たな販路を獲得することも可能です。
コンテンツマーケティングを取り入れることで、広告出稿に多くのコストをかけずに、より効果的なマーケティングを行うことができます。また、コンテンツを活用することで、新しい顧客を獲得したり、既存の顧客との関係を深めたりすることができます。
例えば、会社のブログを活用して、新製品の紹介や新しい情報を発信することで、新しい顧客を獲得したり、SNSを活用して、既存の顧客とのコミュニケーションを深めたりすることができます。本来は広告を出稿し認知を広める必要がありますが、そういった心配もありません。
コンテンツマーケティングを取り入れることで、会社のイメージを高めるブランディング戦略に役立てられます。
例えば、会社のサービスや製品を使用した実例を投稿を投稿することで、会社の商品を使うイメージができ、ブランド力を高めることができます。
コンテンツマーケティングを活用することで、営業活動を効率化し、短時間で多くの見込み客を獲得することができます。
例えば、会社の製品やサービスに関する記事を書いたり、ビデオを作成したり、ソーシャルメディアで情報を発信したりすることで、その情報に興味を持ってくれるユーザーが増えると考えられます。
そのため、営業担当者が個別に営業活動を行う必要がなくなり、営業時間を短縮することができます。営業時間を短縮することができれば、他の主要業務に時間を割くことができるでしょう。
コンテンツマーケティングの定義では、コンテンツ形式や配信経路同様に、達成すべき目標も限定されていません。とはいえ、コンテンツマーケティングには段階があります。
ジョー・ピュリッジ氏は『エピック・コンテンツマーケティング』の中で、同じくCMIのロバート・ローズ氏が取り組むコンテンツマーケティングの成熟度モデルを紹介しています。このモデルを参考に、コンテンツマーケティングを行う企業は、自分たち自身の現在地を確かめ、次にどこを目指すべきかがわかります。
まずアプローチするべきはコンテンツの認知です。伝統的なメディアの枠、オーディエンスの時間に無理やり割り込むのではなく、オーディエンスが求めている情報を、求めているタイミングで見つけてもらうことになります。
コンテンツを見つけてもらうには、ニーズを満たすことが重要です。ここでは、主要な買い手のペルソナのアッパーファネルにアプローチします。“見つけてもらう”ことと相性がよいチャネルは自然検索になります。したがって、コンテンツマーケティング初期はSEO中心にコンテンツを配信するのが良いでしょう。
その次の段階はソートリーダーになります。この段階では、ブランドとして製品やサービスの枠を超えた価値を提供し、ブランドの信頼を高めるコンテンツを作成することで、業界でのリーダーシップを獲得します。
コンテンツマーケティングを行う企業は、単に主要な買い手のペルソナだけではなく、業界のインフルエンサーに向けたコンテンツ作りに移行します。例えば、他社製品やサービスの利用について触れたコンテンツや、独自リサーチ結果を掲載したコンテンツなどが挙げられます。
最終段階は、ストーリーテラーです。コンテンツと顧客との関係を一体化させます。そのために、より大きなストーリーにコンテンツを統合することになります。
ストーリーで語られるのは、開発した自社サービスの特別な強みなどの売り手側の一方的な売り文句ではありません。顧客とブランドの双方向のやり取りであり、これから乗り越えるべき課題とそれを乗り越えた先の未来についてです。
よいストーリーを構成する3要素は、
①他のブランドと識別できるキャラクター
②感情が伴う乗り越えるべき困難
③その困難に挑む決意
であると考えられています。ストーリーテリングについて、詳しく知りたい方は、HubSpot社の「The Ultimate Guide to Storytelling」をご覧ください。
コンテンツマーケティングがストーリーテラーの段階まで進むと、製品やサービスの需要が創出されることもあります。また、ストーリーでブランドを差別化することで、顧客との関係性を構築します。
コンテンツマーケティングを進めるにあたって、自社がどの段階にいたいのか考えることが重要です。施策面において、例えばコンテンツ認知までであれば、自社の見込顧客が検索行動を取るのであれば、コンテンツSEOで十分かもしれません。ソートリーダー、ストーリーテラーの段階まで目指すのであれば、どうでしょうか?見込顧客が能動的に検索行動を取り、自社のコンテンツを見つけてくれるのを待つだけでは、不十分かもしれません。変わりゆく市場・競合・自社の状況を観察しながら、どの段階まで進めるのかを決めなければなりません。
下記は実際にコンテンツマーケティングをはじめる際に行うべきことです。
なお、滝のように上から下に一気に進めることができれば、戦略立案を行う人間にとっては非常にラクなのですが、実際には前のプロセスに戻ったり、行ったり来たりしながら、進めることが多いです。自社が発信したいことだけにフォーカスしていても見向きもされないし、見込顧客が求めているだけで自社の利益につながらなければ続きません。両者の利益になる点を見極めるためには、見込顧客と自社ブランドを行き来して考える必要があるのです。
まずは具体的な目標を定める必要があります。コンテンツマーケティングにも自社の予算が充てられます。自社の利益を考慮せず、ただコンテンツをつくっているだけでは不十分なのです。売上拡大にも、コスト削減にもつながらないのであれば、実施しない方が随分よいでしょう。
下記はマーケティングファネルに応じて、背後に設定しうる目標の例です。
定義からもわかるように、コンテンツマーケティングは自社の利益につながる顧客の行動を促すものなので、どのステージからどのステージへの促進を目指すのか、という観点で目標設計をするとよいでしょう。
次に、ミッションステートメントを策定します。
『エピック・コンテンツマーケティング』において、ジョー・ピュレッジ氏は、
ミッションステートメントとは、その会社の存在意義だ。
と述べています。
また、ミッションステートメントを明確にするためには、
を決定することになります。
例えば、株式会社西松屋チェーンが運営するオウンドメディア「MIMI STAGE」では、「ミミステージの想い」というコンテンツにて、下記のミッションステートメントを掲載しています。
このミッションステートメントを要素に分解すると、次のようになります。
筆者個人としては、目標と並んで、ミッションステートメントがコンテンツマーケティングにおいて、重要であると考えています。どのチャネルを活用するのか、どんなコンテンツ形式を選ぶのか。明確な理由がなく、施策が決定されているケースが多々見受けられます。当然、そこからよい戦略が生まれることもありません。コンテンツマーケティングの成功には、何故それを実施するのかという明確な理由が不可欠なのです。
例えば、コンテンツSEOひとつをとっても、ミッションステートメントの存在が成果に違いを生み出します。コンテンツSEOにおいて、網羅性と独自性を満たすコンテンツが高い評価を得ると言われています。網羅性とは、検索ユーザーの意図を網羅的に満たすことができる話題の量に触れているか、という観点です。それに対して、独自性とは、検索ユーザーの意図において、競合のコンテンツと異なり、そのコンテンツだけが満たせる点があるか、という観点です。
仮にミッションステートメントがなくても、検索結果を見れば網羅性は担保することができます。しかしながら、独自性を満たすことは非常に難しくなります。競合のコンテンツと違い、自社コンテンツが独自に何を発信するべきか、が不明瞭だからです。誰に、何を通じて、どのような結果を届けるのかを定めていれば、自然と独自性があるコンテンツを作成できるようになります。
ミッションステートメントを策定するために、誰にコンテンツを見つけてもらうのかを決めます。
顧客の集合体としての、「フォーカス顧客。」実際の買い手から得た情報をもとに作成する、実在する人物を掛け合わせた合成写真である「ペルソナ」。これら2つを定めます。そして、属性に留まらず購買の因果関係を探ります。
一般的には、施策で注力する顧客群を“ターゲット”と呼ぶケースが多いかとは思います。ここでは、中央大学の田中洋氏の著書『ブランド戦略論』に倣って、敢えて“フォーカス顧客”と呼びます。売り手側からのメッセージを一方的に投げる的(まと)としてのターゲットではなく、コンテンツマーケティングはあくまでも誰にコンテンツを見つけてもらうのかという観点に基づくからです。また、ZMOTの説明からもわかるように、デジタル時代の顧客は、受動的に情報を与えられるのではなく、自ら能動的に情報を獲得する自律性をもっているという特徴があります。この意味合いからも、コンテンツマーケティングでは“フォーカス顧客”と呼ぶ方が適切かと思います。
顧客群をセグメントで切り分け、どのセグメントにフォーカスするのかを決めることになります。注意しなければならないのは、切り分ける軸は、製品・サービスの機能ではなく、顧客属性(人口統計学的・心理学的・地理学的・行動学的属性)になります。
ペルソナは、実際の買い手のデータや調査に基づく、半架空の理想的な顧客の代表的な人物像です。顧客群であるフォーカス顧客から、重要な要素を抜き出してペルソナを作成します。この人は普段どのような生活をしているのか、この人の悩みは何かなど、フォーカス顧客では描き切れない詳細を記載します。
通常、コンテンツマーケティングは複数人のプロジェクトとして進行します。外部の会社にコンテンツ制作を依頼することも多いです。ペルソナを作成することで、コンテンツマーケティングに関わるメンバーの間で、誰に語り掛けているのかの共通認識を持つことができます。
フォーカス顧客では、顧客を属性で切り分けました。そして、ペルソナではその詳細を描きました。
しかし、顧客属性に留まってはいけません。顧客属性と購買の間に、相関関係はあっても、因果関係は必ずしもないからです。顧客属性と購買の間に因果関係があるとはどういうことかというと、「○○だから購買する」が成り立つかどうかです。例えば、弊社が提供しているSEOツール「SEARCH WRITE」を例にとって考えてみると、「男性だからSEOツールを契約する/しない」といったことは通常考えられません。これは顧客属性と購買に因果関係がないといえます。一方で、「SEO担当者だからSEOツールを契約する」といったことはありえそうです。これは顧客属性と購買に因果関係がある例ですね。
本当のところ洞察するべきは、JTBD(job-to-be-done)だと筆者は考えます。詳細は以下見出し内で説明しますが、やや難易度が高いのでスキップして次のステップに進んでも問題ありません。
JTBD(job-to-be-done)とは、直訳すると“片付けるべき仕事”です。『イノベーションのジレンマ』で有名なクレイトン・クリステンセン氏が世に広めた用語になります。
JTBDは、「人々は片づけたい仕事のために、お金を払い製品やサービスを“雇う”」という考え方です。これは、「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」という誰もが一度は見聞きしたことがあるセオドア・レビット氏の格言に通じるものがあります。
JTBDには次の3つの側面があります。
機能的側面に注目されることが多いですが、実際にはもっと奥行きがある理論です。例えば、サラリーマンが英会話スクールに通う場合を想定してみましょう。単に機能面に着目すると、望まれる結果は「英語ができるようになること」でしょう。感情面に着目すると、「100年時代においてスキルを身につける安心感」を、社会的側面に着目すると、「挑戦的な人間であるとみなされること」を求めているかもしれません。
JTBDの視点を持つと、属性などの顧客そのものではなく、顧客を取り巻く文脈に焦点を当てて考えることができます。製品・サービスを売るのではなく、片づけたい仕事に応える。これはまさに、製品・サービスを売り込むのではなく、顧客にとって有益なコンテンツを届けるコンテンツマーケティングに通じる考え方です。
顧客の属性を集めたところで、それらは購買との因果関係はありません。知るべきは、顧客が片付けるべき仕事なのです。筆者は過去に、「できるだけ多くのペルソナを作りましょう」とクライアントに提案したことがありました。今振り返ると、明らかに間違っていた提案だったと思います。片付けるべき仕事が同じなら、顧客属性が異なっていても何も問題ないはずです。もし自社があまりにも多くのペルソナを作成しているのであれば、それは顧客が片付けるべき仕事が何かを理解できていないのかもしれません。
同じペルソナだとしても、状況によって片付けるべき仕事は変化します。その時々で有益なコンテンツを届けるためにも、顧客の購買までのプロセスを可視化する必要があります。そこで効力を発揮してくるのが、カスタマージャーニーです。
カスタマージャーニーとは、顧客の状況、行動や思考、感情など、製品やサービスに関する顧客の意思決定プロセスのことを指します。それらを図示したものがカスタマージャーニーマップと呼ばれています。通常、顧客の意思決定プロセスだけでなく、売り手側の販売プロセスと、それらの接点(タッチポイント)も組み合わせて描かれます。また、ジャーニーの始点と終点にルールはなく、コンテンツマーケティングに活かすのに十分具体的なアウトプットを出すのに適切なものを選択しなければなりません。
カスタマージャーニーマップから導き出すべきものは、何でしょうか?1つは、顧客がどのような状況にて、何を考え、何を感じているのか、その行動を理解するために準拠するべきものを得ることです。コンテンツマーケティングに限らず、施策において、何をどうするべきか。その答えは基本的には顧客側にあります。
2つ目に、どのタイミングで、どのような知識を顧客は持つべきかを考えることです。どのような知識を持てば、顧客は購買に近づいてくれるのか、を考える土台にすることができます。ここでも注意しなければならないのは、知識を与えるのではなく、顧客側の能動的な学習の手助けをする姿勢を持つことになります。
最後に3つ目は、どのタイミングに注力すれば、もっともビジネス上の利益につながるのか検討することです。ZMOTからもわかるように、顧客は自分で情報を得て、自分で意思決定プロセスを進めます。どのタイミングの顧客にコンタクトすることが重要なのか、カスタマージャーニーマップから考えることができます。
AIDMAやAISASなど、消費者行動モデルは数多く存在します。中でも、DECAXはコンテンツマーケティングにて、よく使われるモデルです。
の頭文字を取ったものになります。
DECAXは、従来のAttention(注意)をこちらに向けるといった、情報発信者側主体のモデルとは異なり、人々にDiscover(発見)してもらうという顧客側主体のモデルです。その点でコンテンツマーケティングに特化しており、よく活用されています。
とはいえ、筆者が実際に使うことはあまりありません。消費者行動モデル自体、世の中一般の消費者行動を説明するのには適した素晴らしいツールですが、必ずしも自社の顧客の行動を描いてくれるわけではないからです。無思考に何らかの消費者行動モデルを採用しても、「戦略っぽいもの」ができあがるだけです。塗り絵で名画は誕生しません。労力をかけてでも自社の顧客を調査・観察し、状況・行動・思考を洗い出し、それらをまとめ上げる形で、ユニークなカスタマージャーニーを作成することをおすすめします。
カスタマージャーニーマップは、直線的に描かれることがほとんどです。しかしながら、実際のカスタマージャーニーそのものは直線的だとは限りません。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの研究員は「The consumer decision journey」にて、循環型のカスタマージャーニーを提唱しています。
ZMOTにもつながる通り、購買前にオンラインでの調査・比較を行う率が高まってきていると主張しています。
また、検索行動に絞ってみても、顧客の行動は購買に対して直線的ではないことがわかります。2020年、Google社はバタフライ・サーキットと呼ばれる情報探索のフレームを提唱しました。簡単に説明すると、バタフライ・サーキットとは、検索において、意思決定のために「さぐる」行動と、意思を「かためる」ための行動を行ったり来たり繰り返しているというものです。
便宜上、カスタマージャーニーマップは直線的に描かれることが多いかと思います。ただし、実際のカスタマージャーニーそのものは直線的なカスタマージャーニーマップでは十分に描写できていないということを念頭に置いておかなければなりません。
「フォーカス顧客」「ペルソナ」「カスタマージャーニーマップ」を描くことができたら、コンテンツで何のトピックを取り上げるのかを決めます。
顧客が求めていて、(競合ではなく)自社が最も満たすことができるニーズをメインのトピックに据えるべきです。単に顧客に見つけてもらうだけなら、顧客にさえフォーカスすれば問題ないです。ただし、コンテンツ認知だけでなく、ソートリーダー、ストーリーテラーに成熟していき、自社の利益を創出するためには、情報提供において自社がNo.1になれるトピックを選ぶべきです。
また、売り手側の視点で、自社サービスの優位性を唱えても、顧客には求められていません。コンテンツを通じて、顧客側にベネフィット(便益)を届けなければなりません。誰に届けるのかと同様に、何をベネフィットとして届けるためにコンテンツを作成するのか、をコンテンツマーケティングに関わるメンバーの中で共有しておかなければなりません。
例えば、弊社のオウンドメディア『PINTO!』では“「わかる」ではなく、「できる」を全ての人に。”というメディアコンセプトのもと、Webマーケティング領域における、より実践に近い内容を発信しています。
これは弊社の独自の強みに紐づいていると考えています。弊社はSEOのコンサルティングサービスだけでなく、コンテンツSEOのインハウス化支援ツールである『SEARCH WRITE』を提供しています。通常のコンサルティングサービスのみを提供している会社であれば、顧客が施策を内製化して「できる」ようになってしまうと困ってしまうかと思います。弊社はそもそも内製化支援ツールを提供しているので、むしろ「できる」を望んでいます(「できる」ようにならなければ、ツールも使ってくれないため)。顧客側は自分たちでWebマーケティングを「できる」ようになりたいと考えており、唯一応えられるのが弊社である。この考え方で、コンテンツを選定しています。
「誰に向けて」「何の情報を通じて」「どのような結果を届けるのか」を定めたら、コンテンツ作成に移ります。
「オウンドメディア=コンテンツマーケティング」、もしくは「コンテンツSEO=コンテンツマーケティング」という勘違いからか、コンテンツマーケティングで作成するコンテンツは記事コンテンツであると思われていることが多いです。もちろん記事コンテンツがメインにはなるのですが、実際にはコンテンツの形式は限定されていません。ここではよくみるコンテンツ形式の一部を紹介します。
テキストコンテンツだけでなく、動画コンテンツもまた、ひとつのコンテンツ形式です。特に、実際に見てみないとその価値を判断しにくい商品において、効力を発揮すると思われます。例えば、株式会社ニトリの公式YouTubeでは、家具の組み立て方法や、コーディネート例などを動画コンテンツにて発信しています。
テキストコンテンツの代替として、動画だけではなく、漫画も挙げられます。コンテンツ認知の段階で活用されることが多いです。「文章は読まないけど、漫画はついつい読んでしまう」方も多いのではないでしょうか?とはいえ、YouTube広告でよく見かけるような、不快な漫画コンテンツは望まれていません。従来の顧客の時間に割り込む邪魔な広告ではありません。あくまでも顧客が望むかたちのひとつとして漫画コンテンツも選択肢に入れていただきたいです。
特定のトピックでの専門家として認識してもらうためには、業界のライバルも参考にするような調査結果を発信していくべきです。その手法のひとつとして、アンケートが挙げられます。アンケート調査結果は、他社に引用してもらえることも多いため、SEO上の観点からも被リンクの獲得といったメリットを享受しやすいです。
特にB2Bにおいて、コロナ以降、数多く目にするようになったのが、ウェブセミナーです。オンラインで見ることができるセミナーやプレゼンテーションを指します。ウェブセミナーは行動喚起力に優れ、記事コンテンツやメールマガジン、ホワイトペーパーの補完的な役割を果たします。弊社でも月5本ほどのウェブセミナーを実施しています。株式会社PLAN-Bのウェブセミナーはこちらからご覧いただけます。
コンテンツマーケティングを長く続けると直面する課題がネタ切れです。筆者も何度もネタ切れに悩まされてきました。しかしながら、現実にネタがなくなってしまうということは起こりえません。実際には、ネタをネタとして認識できていないことの方が問題なのです。筆者の経験では、前述のJTBDに改めて目を向ければネタ切れ問題は解決すると考えています。
例えば、某骨董品買取のお客様のコンテンツマーケティングでも、ネタ切れに悩まされていました。機能的側面に囚われていたので、「骨董品を売る」という価値にしか目が向いておらず、もうネタがないと悩んでいたのです。しかしながら、感情的側面に着目してみると、「故人の遺品を大切に扱ってほしい」や「自分が持っている骨董品が贋物ではないと安心したい」といった新たな価値を発見して、コンテンツのネタを増やすことができました。
もしもネタ切れに悩まされたら、今一度自社の顧客が求めていることは何かを考え直すタイミングなのかもしれません。
ひとつのネタでひとつ形式のコンテンツだけしか作成してはならない。これもよくある思い込みです。「この話、前に取り上げたしなぁ…」と悩むこともあるかと思いますが、顧客側は前に取り上げた話か否かは知りません。発信している内容をすべて知ってもらえていると過度に期待をしてはいけません。自社に興味を示してくれないのが普通です。むしろ複数のコンテンツ形式で作成できるような強力なネタを選ぶべきです。
例えば、弊社では個社ごとにご提案させていただいた資料を基に抽象度を高めて理論化し、記事に転用したり、ウェブセミナーの題材にしたりしています。実際にお客様にお話して、喜んでいただけた内容は積極的に活用して、他のコンテンツ形式にも落とし込んでいます。
本を出版された方が、その内容を切り分けて、オウンドメディアで公開したり、Twitterで発信したり、ウェブセミナーで話したり、取材に応じていたりするのも、ひとつのネタを複数コンテンツ形式に展開している例でしょう。
CTA(Call to Action)とは、行動喚起のことです。具体的には、購買プロセスのそれぞれの段階にいるペルソナに対し、スムーズに次の段階に進んでもらうためのアクションを促すことになります。例としては、関連記事へのURL(ユーザーを移動させる導線)や、メルマガの購読、カタログのダウンロードの用意、などがあります。
KPI(Key Performance Indicators)は重要評価指数といって、他のマーケティングにも欠かせない効果測定を行うための数値です。
コンテンツマーケティングは、従来の広告などに比べて成果達成までに長い時間を要します。何を指標にしたらよいのか、KPI設定に悩む場合が多いでしょう。オウンドメディアのゴールを最終的なコンバージョンや売り上げ寄与といった画一的なものにしてしまうと、成果が出るまで待つことができずに「失敗している」と判断しかねません。
したがって、各CTAに応じて、段階的な複数のKPIを設定し、計測するべきだと考えております。
コンテンツはつくって終わりではありません。コンテンツそのものに価値はないです。そのコンテンツを必要としているユーザーに届いてはじめて、価値が生まれます。つくったコンテンツは複数の手法の組み合わせによって、配信しなければなりません。
第一に考えるべきは、SEOです。検索エンジン最適化に向けた施策を実施して、検索エンジン上で、そのコンテンツを求めているユーザーに見つけてもらえるようにしなければなりません。メリットとしては、適切なタイミング(ユーザー側のタイミング)で接触できることです。ユーザーは何らかの意図をもって検索行動を取っているので、ユーザーの時間に無理に割り込むことはありません。デメリットとしては、ユーザーが検索するきっかけ自体はつくれないことです。何らかの外部刺激によって検索行動に移るので、基本的には“待ち”の施策になります。
では、能動的な行動を取る前のユーザーには、どのようにアプローチすればよいのでしょうか?選択肢のひとつに、ソーシャルメディアでの配信があります。SNSでの配信を通じて、情報収集に対して受動的な状態のユーザーに、アプローチできます。もちろん、適切なタイミングかどうかはそのときのユーザーの状態次第です。しかしながら、コンテンツに興味関心を持つきっかけを提供できます。広告ではないとはいえ、企業側・ブランド側からの発信であることは変わりありません。また、ソーシャルメディア運用初期においては、アプローチできるユーザー数にも限りがあります。ユーザーからの信頼を獲得し、ユーザーが能動的に自社のコンテンツを探してくれるようになるまでは、外部の力を借りることも考えるべきです。
借りるべき外部の力のひとつは、インフルエンサーです。自社の業界やフォーカス顧客に対して強い影響力をもっているインフルエンサー向けのコンテンツを作成し、自然と拡散してもらうことを狙います。こちらも、ユーザーにとって適切なタイミングかどうかはユーザーの状態次第です。とはいえ、初期段階の全く認知されていない段階では、第三者からの発信の方がより興味関心を獲得しやすいと言えるでしょう。
また、“代理体験的アプローチ”が有効な商品・サービスの場合は、第三者の体験を発信してもらうことが効果的です。いわゆる経験財(実際に購入したあとではないと、その製品・サービスの価値を理解しにくいもの)を取り扱っている場合は、積極的に考えるべき施策です。これは、事例紹介型のコンテンツにも同様のことが言えます。
借りるべき外部の力のふたつ目は、広告(ペイドメディア)です。コンテンツマーケティング、インバウンドマーケティングの背景として、問題視されているのは、ユーザーの時間に割り込み、邪魔をする広告です。求めている情報を求めているタイミングを狙って届けることができるのであれば、広告配信も検討するべきです。
コンテンツマーケティング立ち上がり初期では、自然検索での流入も少なく、ソーシャルメディアの影響力も弱い段階では、一定数の読者を集めるのを早めるために活用するとよいでしょう。
また、コンテンツマーケティングが成熟したあとも、広告を活用できます。例えば、コンテンツの価値を広告配信にて検証するなどです。この点に関しては、Think with Googleにて、SUUMOが「ファインドキャンペーン」を活用してコンテンツの価値を検証した事例が掲載されているので、ご興味がある方はこちらの記事もご覧ください。
すでに関係性を構築している顧客に対しては、メルマガ配信という手法も活用できます。ユーザーが求める情報を、求めるタイミングで配信することがここでもポイントになります。相手の興味に合わせた内容でなければ、ただの押し売りであり、配信したメルマガもユーザーの迷惑フォルダ行きになるでしょう。それを防ぐためにも、MAツールを活用するなどして、ユーザーの状態に合わせたコミュニケーションを設計しなければなりません。
コンテンツマーケティングについて、成功している状態のイメージを持てるように事例をいくつか紹介いたします。詳細はこちらの記事を御覧ください。
当メディア「PINTO!」の例をご紹介します。PINTO!はSEOやインターネット広告などのWebマーケティングのコンサルティングサービスや、SEOツール「SEARCH WRITE」やインフルエンサーマーケティングツール「Cast Me!」を提供する、当社「株式会社PLAN-B」が運営しております。5,000社を超えるマーケティング支援実績を基に、Webマーケティング全般に関する記事、当社のノウハウを発信するお役立ち資料やセミナーという形式でコンテンツを発信してご信頼をいただき、メディア内にあるCTAやポップアップから、各種サービスにお問い合わせをいただいています。弊社のメインプロダクトである「SEARCH WRITE」のリードなどはほとんどPINTO!からのリードであり、今やPINTO!なしには事業が成立しない状態です。
画像:無料から使えるクラウド会計ソフト freee | クラウド会計ソフト freee会計
個人事業主から法人会計、人事労務管理や会計をサポートするfreee株式会社は、運営するWebサイトでコンテンツマーケティングに取り組んでいます。サービスサイトとしての役割も強い当サイトですが、サービスの情報に加えて「バックオフィスの基礎知識」として「会計」「人事労務」「会社設立」「確定申告」などについてノウハウを提供する記事コンテンツが網羅的に掲載されています。各記事内に、その課題に合った「会計freee」や「人事労務freee」といったサービスの活用方法が掲載されており、Web検索などを通して課題解決のために記事を訪れた読者が、自然とサービスの機能や魅力を認知する設計となっています。
この記事をご覧になられている皆様の中には、すでにコンテンツマーケティングに自社で取り組んでいて、うまくいかずにお悩みになっている方もいらっしゃるかもしれません。この章では、コンテンツマーケティングのよくある失敗をご紹介します。
2019年、日本のコンテンツマーケティングにおいては大きな転換期だったと思います。数々の大手オウンドメディアの閉鎖が相次ぎ、話題になっていました。各社の内部の事情までは存じ上げませんが、おそらくROIが合わないと判断されたのでしょう。
私がお付き合いさせていただいている企業様からよく聞く閉鎖理由第1位は「利益につながっているかわからない」でした。よくよく話を聞くと、「コンテンツマーケティング=オウンドメディア運営」、かつ、コンテンツSEOでの集客だけの話と勘違いし、さらにはKPIも目的からの逆算もなくオーガニックセッションの獲得と定めていた、といった具合でした。
流行っているから、という程度の理由で戦略なしにコンテンツマーケティングに投資をして、結局撤退したという悲しいお話をお伺いすることがあります。
もちろん、そもそもコンテンツマーケティングは短期で成果があがるものではないので、長期での取り組みは覚悟しなければなりません。しかしながら、戦略がないままであれば、いくら長く続けても成果はでないでしょう。
フィリップ・コトラー氏の著作『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』では、マーケターが陥る問題として下記のように述べられています。
問題は、マーケターが往々にしてコンテンツ・マーケティングを形態の異なる広告とみなし、ソーシャルメディアを形態の異なるメッセージ拡散媒体とみなしていることだ。なかには、広告をほとんどそのままソーシャル・メディアに移すだけのマーケターもいる。彼らはコンテンツを長尺版の広告とみなしているのである。マインドセットの大きな転換が求められている。コンテンツは確かに新しい広告だが、両者はまったくの別物だ。広告が製品・サービスの販売を促進するために伝えたいと思う情報を含んでいるのに対し、コンテンツは顧客が自分の個人的・職業的目的を達成するために使いたいと思う情報を含んでいるのである。
オーディエンスが求めている情報を、求めているタイミングで届けることがコンテンツマーケティングです。それにもかかわらず、一方的なコミュニケーションの発想から抜け出せず、旧来のマインドセットのままでいると、自社が届けたいメッセージも、あふれる情報に飲み込まれて、無視されてしまうことになります。
オーディエンスが望むかたちでのコミュニケーションが強調されるあまり、最後まで売り込まないままでいて、自社の利益につながらないケースが見受けられます。あくまでも売り込むタイミングを見極めるべきだという話です。段階的に情報を届けて機が熟したら、むしろ売り込むべきなのです。購買という決断には痛みが伴います。オーディエンスの背中を押してあげる意味でも、適切なタイミングで売り込まれることが求められます。
私が新卒の頃、とあるクライアントとコンテンツマーケティングでお取引をさせていただいていました。“ユーザーファースト”を十分に理解していなかった私は、クライアントの商品に触れていないコンテンツをご提案したところ、ご担当者様に「お客様が抱える課題に対して、自社商品というサービスを提案しなければ、お客様のためになっているとは言えない」とご指摘いただいたことがあります。
ユーザーファーストと売り込みは相反するものではありません。必要な情報を、必要なタイミングで提示しているのであれば、その売り込みもまたオーディエンスのためです。お客様が求めていて、自社の利益にもつながるスイートスポットを見極めること。それさえできていれば、売り込みも問題ではありません。(その見極めが難しく、面白い点でもありますが。)
コンテンツマーケティングの定義から、注目されている背景、メリット・デメリット、成熟度に応じて目指すもの、戦略設計、コンテンツの配信、よくある失敗を紹介いたしました。
コンテンツマーケティングも企業の予算を充てて実施する以上、成果を出さなければなりません。そのためには、綿密な自社独自のコンテンツマーケティング戦略が必要になります。これからコンテンツマーケティングを立ち上げる方や、現在取り組んでいるが成果にお悩みの方に、今一度自社のコンテンツマーケティング戦略を見直す機会を提供できたのであれば幸いです。
参考書籍:
クレイトン・M・クリステンセン,『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』,ハーパーコリンズ・ ジャパン,2017年8月1日
ジョー・ピュレッジ,『エピック・コンテンツマーケティング 顧客を呼び込む最強コンテンツの教科書』,日本経済新聞出版,2014年6月24日
フィリップ・コトラー,『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』,朝日新聞出版,2017年8月21日
株式会社日本SPセンター,『Webコンテンツマーケティング サイトを成功に導く現場の教科書』,エムディエヌコーポレーション,2015年12月18日
高広伯彦,『インバウンドマーケティング』,SBクリエイティブ,2013年9月20日
田中洋,『ブランド戦略論』,有斐閣,2017年12月13日