【専門家コラム】AI検索対策は「SEOの延長」OR「別途LLMOが必要」?そもそも「Optimization(最適化)」と呼ぶ必要はあるのだろうか

【専門家コラム】AI検索対策は「SEOの延長」OR「別途LLMOが必要」?そもそも「Optimization(最適化)」と呼ぶ必要はあるのだろうか

ここ最近、AI検索対策はSEOの延長線上なのか、それとも別物なのか」という分類論が、驚くほど頻繁に交わされています。

「これはSEOの進化だ」「いや、全く別の概念だ」「GEOと呼ぼう」「いやAEOだ」

何が一番しっくりくるのか、これを考えたくなる気持ちはわかります。が、正直なところ、なんでも構わないというのが私のスタンスです。なぜなら、これらの議論は、私たちのビジネスを1ミリも前に進めてくれないからです。

本当に重要なのは、整理の仕方ではなく「AIを使って情報を集めるようになったユーザー」が、目の前に出現したという事実そのものではないでしょうか。各論を切り分けることよりも、私たちはこの事実と向き合う必要があります。

また「LLMO・GEO・AEO・AIOなど」を、SEOや広告、SNS運用といったこれまでのWebマーケティング手法と横並びの「新しい施策」として捉えてしまうことも危険だと感じています。なぜなら、その認識を持った瞬間、私たちの思考は「AIに好かれるためのテキストの書き方」や「データ構造のいじり方」といった、小手先のシステムハックに終始してしまうからです。

だからこそ、本稿では「~最適化(Optimization)」という専門用語を使わずにAI検索対策を説明してみたいと思います。

私たちが直面している変化の本質は、手法が一つ増えたことでも、新カテゴリーが誕生したことでもありません。

この記事では、「AIを使って情報収集をするユーザー」が目の前に登場したことを認識し、彼らとのコミュニケーションをどう再設計するかという、もっと根源的な変化について、じっくり解説してみたいと思います。

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「施策」が増えたのではない、「ユーザーの情報収集行動」が変わった

AI検索対策によって我々のやるべきことは増えたのでしょうか。結論から言えば、新しい施策(やるべきこと)は何一つ増えていません。マーケティングの本質はいつの時代も同じです。ユーザーの課題を理解し、自社ならではの価値を提案し、信頼を獲得して選んでもらう。この構造はなにも変わっていないのです。

では、何が変わったのか。

変わったのは、施策ではなく、ユーザーの情報収集行動です。

これまでユーザーは「検索→比較→サイト訪問」という比較的シンプルな経路で情報を集めていました。そこにSNSが加わり、口コミやインフルエンサーが情報源となります。そして今、ここに「AIに相談する」という全く新しい経路が、極めて自然な形で組み込まれつつあるのです。

AIの登場による情報収集行動の変化

つまり、私たちが意識すべきことは、既存のコミュニケーション施策を、AIも併用するようになったユーザーの目線(および彼らが使うAIの特性)に合わせて適応・拡張させることなのです。 

私たちが向き合うべき相手は、AIのアルゴリズムではありません。AIという新しい便利な道具を手に入れ、それを使って情報を探している生身の人間です。

仕様は明日にも変わります。しかし、ユーザーが「もっとラクに、もっと早く、もっと納得して選びたい」と願う気持ちは変わりません。ここを取り違えると、いくらAIの仕様を追いかけても、本質的な成果には繋がらないでしょう。

「人」と「AI」の3つのギャップを解き明かす

では、AIを道具として使うユーザーに、自社の情報を届けるにはどうすればいいのでしょうか。ヒントは、人の認知と、AIが情報を処理・提示するプロセスの間にある「ギャップ」にあります。

ここからは、ブランド想起、情報源、判断軸という3つの視点から、このギャップを紐解いていきます。

1.ブランド想起のギャップ

人が「あそこなら安心だ」と直感的にブランドを思い出すとき、そこには過去の体験、感情、CM、口コミ、周囲の評判といった複雑な文脈が絡み合っています。

一方、AIは人間のように体験や感情を思い出すわけではありません。Web上のテキスト、ニュース、評価、技術仕様、比較情報などをもとに、ユーザーの質問に対して「どのブランドが文脈上ふさわしいか」を推定し、回答の候補として提示します。

ここで強調したいのは、人の頭の中でよく思い出されるブランドと、AI回答によく登場するブランドは、必ずしも一致しないということです。

誰もが知る老舗ブランドが、AIの回答ではほとんど言及されない。逆に、世間的な認知はまだ薄いにもかかわらず、AIがしきりに名前を挙げる新興ブランドがある。こうした現象が、いま同時多発的に起きています。

自社がいまどこにいるのかを直視するところから、AI検索対策は始まります。

💡「人の認知度」と「AIの認知度(言及率)」の整理

ハーバード・ビジネス・レビューは、この構造を「人の認知度」と「AIの認知度(言及率)」の2軸4象限で整理しています。

人にもAIにも強いブランド、AIには強いが人の認知が薄いブランド、人には知られているがAIには登場しにくいブランド、そしてどちらにも届いていないブランドが存在します。

「人の認知度」と「AIの認知度(言及率)」の整理

2.情報源のギャップ

人は、情緒的に信頼できる情報源を好みます。インフルエンサーの体験談や、憧れの人がSNSで呟いた一言に強く動かされることもあります。

「知っているから」「好きだから」「なんとなく信頼できるから」という理由で情報源を選ぶことは、決して珍しくありません。

💡生成AIの回答だけで意思決定を行わない人の情緒的行動

株式会社宿研が国内旅行計画で生成AIを使った630人を対象に実施した調査でも、AIの提案後にユーザーがネット検索、Googleマップ、SNSなどで追加確認している実態が示されています。AIに提案された宿泊施設を採用しなかった理由としては、「クチコミ・レビューの不安」35.4%、「情報が少なく不安だった」26.1%が上位でした。

AIに聞いたあと、ユーザーは公式サイト、比較サイト、口コミ、SNSなどを行き来しながら、自分の不安や納得感に応じて情報を取りに行きます。

その情報源の選び方は、必ずしも論理だけで決まるものではありません。むしろ、感情や不安、期待、検討フェーズといったユーザーの情緒的な判断が強く出ているのです。

一方、AIは感情で情報源を選んでいるわけではありません。

プロンプトとの関連性、Web上の記述、参照可能な情報の量や構造などをもとに、回答に使う情報を機械的に処理し、論理的に見える形で整理します。

ここが、本記事で強調したい主張のひとつです。人間は、AIと同じロジックでは動きません。

AIが回答の根拠として参照しやすい場所と、人が検討の途中で感情的に訪れる場所。その両方に、自社の情報を配置しておく必要があります。

3.判断軸・意思決定のギャップ

人の意思決定は、直感や感情、過去の成功体験に左右されます。情報源のギャップと同様、「なんか良さそう」「前に使ってよかった」「この会社なら安心できる」といった理由で選ぶことも少なくありません。

一方、AIが提示するのは、客観的な比較や論理的な整合性に基づく回答です。たとえば「コスト、納期、サポートの3点から比較した結果、A社が最適です」といった形で、判断理由を整理して提示します。

ここで本質的なギャップが生まれます。人とAIでは、「ブランドを評価する観点」が異なるのです。

人に良いと評価されている観点でも、Web上にある情報によっては、AIからはまったく評価されていないケースも存在します。

  • AI回答の中で、自社がどのような文脈・評価軸で登場しているのか。
  • そしてそれが、ユーザーが本当に選びたい理由と一致しているのか。

ここを確認しないまま施策を打つと、いくらAIに言及されても、「選ばれない言及」を量産することになります。

💡調査でわかる、AIの評価軸の偏重

HBRの旅行業界を対象とした分析では、AIは業界ごとに特定の偏った評価傾向があることを示しました。(「使いやすさを最も評価する」など)また、これらの傾向はAIのモデルごとに異なります。

これは人の評価軸に沿った偏重ではありませんから、やはり人とAIとでブランドの評価がズレる可能性があると推測できます。


注意していただきたいのは、このギャップは「AIに合わせる」ためのチェックリストではない、ということです。また、人が論理的な判断をしないという話でもありません。

ここで示しているのは、「AIを介してでも、自分にフィットするものを見つけたい」と願うユーザーに対して、情緒と論理の両側面から情報を届ける必要があるということです。

人の感情に訴えかけるメッセージを発信しつつ、客観的な事実、比較可能な情報、構造化されたデータをWeb上の適切な場所に配置し、AIにそのロジックを伝える。

この両輪が揃ってはじめて、AIを使うユーザーの選択肢に入り続けることができるのです。

AIを「介する場面」と「介さない場面」のハイブリッド設計

本質が「ユーザーとのコミュニケーション」である以上、私たちはユーザーの生活全体を俯瞰する必要があります。

当たり前のことですが、ユーザーは24時間AIだけを使っているわけではありません。AIを検索代わりに使って客観的な比較をする瞬間もあれば、SNSを眺めて偶然の出会い(セレンディピティ)を楽しむ瞬間もあれば、信頼する企業の公式サイトを直接訪れてじっくり読む瞬間もあります。

だからこそ、これからの情報発信はAIが「介在する場面」と「介在しない場面」のハイブリッド設計が重要になります。

ハイブリッド設計における2つのアプローチ

AIが介在するということは、BtoAtoBやBtoAtoCのコミュニケーションが必要ということです。

難しく考える必要はありません。最終的なユーザーに私たちが伝えたかったことを、AIにも正しく伝えてもらうと考えるのです。AIをハックするのではなく、「その先のユーザーにAIが正しい情報を伝えるためにはどうするか」という思考を大切にしましょう。

ここからはハイブリッド設計における2つのアプローチ方法をご紹介します。

ハイブリッド設計における2つのアプローチ

①AIというフィルターを「通過する」ためのアプローチ

AIが介在する場合、まずはAIがユーザーに対して自社の情報を提供する状況を作らなければなりません。

そのためには、自社の強み、独自のデータ、客観的な事実を、Web上で誰にでも(AIにでも)わかるように正確に発信・構造化しておくことが初めの一歩です。

具体的には、

  • 公式情報(仕様・実績・FAQ)を定期的に更新されている
  • 自社の一次情報・調査データ・顧客事例が公開されている
  • 解説コンテンツに矛盾がなく、網羅的である

といった「構造的な確かさ」の積み上げです。これは特別な新施策というより、本来やっておくべきだった情報整備の延長線上にあります。

②AIを「介さない場合・介した後」のアプローチ

AIの要約や推奨のあとは、最終的に自社サイトやSNSにたどり着いたユーザーの心を一瞬で掴むために、熱量のあるストーリー、独自の顧客体験、情緒的な価値を提示する必要があります。

AIは合理的な「候補」までは持ってきてくれます。しかし、その候補の中から「ここに任せよう」と最終的に決めるのは、いつでも人間の感情と直感です。

ここを担えるのはAIではなく、ブランドの人格そのものです。決して新しいことは話していません。本来のマーケティングにおけるユーザーとのコミュニケーションの話なのです。

視野の広さがそのまま「対策」の質になる

「AIにどう見せるか」という狭い視野ではなく、AIという強力なコンシェルジュを味方につけたユーザーのカスタマージャーニー全体にどう伴走するかという広い視野を持つことが、本当の意味での「対策」になります。

特に①AIというフィルターを「通過する」ためのアプローチを考えると、どうしてもAIの技術的ハックの話になりがちです。どこまで行っても、その先にいるユーザーを中心とした情報設計が求められます。

なお、AIを介する場面と介さない場面のコミュニケーションにおいては、佐藤尚之氏が「AIに選ばれ、ファンに愛される。 変わる生活者とこれからのマーケティング 」にて、「AIルート」「ファンルート」という切り口で詳しく説明していますので、ご興味があれば是非ご一読ください。

>>「AIに選ばれ、ファンに愛される。 変わる生活者とこれからのマーケティング」を読む

結論:テクノロジーが変わっても、向き合うべきは「画面の向こうの人間」

どれだけ大規模言語モデル(LLM)が進化し、検索体験が変わろうとも、最後にその画面を見て、納得し、対価を支払い、サービスのファンになるのは、いつだって「血の通った人間」です。

「新しいアルゴリズムの仕様が変わった」「次はあのAIに対応しなきゃ」「これはSEOなのか別物なのか」

目先の変化や、略称の分類論に一喜一憂して右往左往するのは、もう終わりにすべきなのかもしれません。

私たちが向き合うべきは、AIというテクノロジーそのものではなく、テクノロジーによって拡張されたユーザーの「知りたい」「選びたい」という欲求です。その欲求に最も真摯に、そして最も正確に応え続けること。それこそが、どれだけ時代が変わっても決して色あせない情報発信戦略だと私は思います。

AI検索対策とは、AIのハックではありません。

AIを使って情報収集するようになった「人」と、どう向き合い続けるかという、極めて古典的で、極めて本質的なコミュニケーション設計のことなのです。

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