BtoBマーケティングで初回/最終接触施策を活用するためのデータ設計と運用

こんにちは。MarketingOpsとして会社のマーケティング領域の支援を行っている河合沙和子です。 マーケターが施策を実施したり分析したりできるよう、主にMA・CRMを使ったデータの設計や実装、運用をしています。

BtoBマーケティングではいろいろな施策がありますが、その良し悪しをどうやって判断すべきでしょうか?ただリード数を集めるだけではなく「売上につながるようなマーケティング施策」を評価したいですが、実際にやろうとすると、リードから売上までを追いかけて計測するのはなかなか難しいです。

そこで、PLAN-Bでは「初回接触施策」「最終接触施策」を計測できる仕組みを整え、分析することで、マーケティング施策の良し悪しを判断しています。 この取り組みについて詳しくお伝えします。

マーケティング施策を評価して、適切に時間と予算を配分したい

PLAN-Bでは広告出稿・セミナー開催・展示会出展・無料ホワイトペーパーなど、いろいろなマーケティング施策を行っています。

しかし、マーケティング予算は限られています。より効果が高い施策が分かれば、予算配分を最適化することができます。 加えて、「リード獲得に効く施策」「商談化に効く施策」など、リードの段階によって適切なアプローチは変わってきます。 しかし、施策が多岐にわたるため、それらの成果を一元管理するのは簡単ではありません。

何を計測するか:初回接触と最終接触

「リード数」を追うことの罠

マーケティングチームは「リード獲得数」をKPIに持つことが多いと思います。 獲得したリードに対しインサイドセールス(以下、IS)チームがアプローチを行い、商談を作成していくため、ISのKPIは「商談作成数」となります。 ISが作った商談にはフィールドセールス(以下、FS)が出席し、FSは受注することを目指します。つまりFSのKPIが「受注数」です。

これが一般的なBtoBマーケティングの分業体制です。

マーケティング・IS・営業の分業

しかし、マーケティングチームが「リード数」だけをKPIとして計測していると、実際には受注につながらない、熱量の低いリードを大量に獲得してしまうことがあります。

「キャッチーなタイトルでセミナーを開催し、話題になって多くのリードを集めたは良いが、ターゲットではない人がほとんどだったため商談につながらなかった」などがありがちなパターンです。
最終的には受注が目的なので、「商談につながりやすいリード」「受注につながりやすいリード」を獲得していく必要があります。

そこで、PLAN-Bでは「商談数・受注数に対して、どの施策がどれだけ影響を与えているのか」を計測することで、商談につながる・受注につながるマーケティング施策を評価する仕組みを構築しています。 そのために計測しているのが、リードの「初回接触施策」と「最終接触施策」です。

「初回接触施策」「最終接触施策」の定義

「初回接触施策」とは、そのリードが「初めてハウスリードになった」時のマーケティング施策、と定義しています。
ある方がリードになったということは、「セミナーに申し込んだ」「展示会で名刺交換した」など、なんらかのマーケティング施策を接点としてその方の情報を取得したということです。この時のマーケティング施策が「初回接触施策」です。

初回接触施策を計測することにより、1つ1つの商談に紐づいているリードが、どの施策からリードになったのかを特定することができます。商談化率が高いということは、熱量が高いということです。それらを基に「どのマーケティング施策を入り口とすれば、より熱量が高いリードを集められるのか?」について分析し、仮説を立てることができるようになります。

「最終接触施策」とは、そのリードが「商談化する直前に接触した」施策です。
つまり、1つの商談に対して1つの施策が紐付きます。 これを分析することで、「リードが商談化しやすい(熱量が高い)のは、どんなマーケティング施策か?」を知ることができます。

例えば「リードが資料請求し、それに対しISが架電し、即座に商談化した」というケースでは、「初回接触施策 = 最終接触施策」となります。 「リードが資料請求し、その時は商談化しなかったが、その後セミナーに参加し商談化した」というケースでは、「初回接触施策 = 資料請求」「最終接触施策 = セミナー」となります。

初回接触施策と最終接触施策

どうやって計測するか:MAとSFA/CRMを組み合わせる

MAツールとSFA/CRMツール

マーケティングチームがリードと施策の管理に使うMA(Marketing Automation)ツールと、営業や事務担当が商談を管理したりするSFA(Sales Force Automation)ツールまたはCRM(Customer Relationship Management)ツールとが分かれていることで、データの分断が生じます。

「商談・受注につながるマーケティング施策は何か?」という観点で分析をするためには、MA→SFA/CRMのデータの流れを整備し、「リードから商談化したか」「受注になったか」をシームレスに計測できる状況を作る必要があります。 PLAN-Bではツール同士の連携ができるものを使った上で、データの持たせ方を工夫しています。下記でご説明します。

実践編:SFA/CRMで初回接触・最終接触のレポートが出せるようになる

最初に設計することが大事

漫然とデータを記録し始めてから何を分析できるか考えるのではなく、分析したい観点から、何を計測できれば良いかを逆算し、それをもとにデータの記録方法を設計するのが大切です。 例えば、初回接触のデータは「リード」情報に属しますが、最終接触のデータは「商談」に持たせるべきです。

初回接触を「リード」に持たせる理由は、1人のリードについて初回接触施策が後から変わることはなく、商談を作成するたびにそのリードの初回接触施策を記録していく必要がないからです。
リードの項目として初回接触施策を持たせておいて、商談にリードを紐づけることでその項目を参照させるのがデータの持ち方として良いです。
最終接触を「商談」に持たせる理由は、1人のリードに対して商談が複数あった場合、それぞれの商談に紐付く最終接触施策があるはずだからです。 これを「リード」に持たせる設計で運用開始してしまうと、その人に紐づく商談が作成されるたびに最終接触施策が上書きされ、過去の商談の分析が難しくなってしまいます。

初回接触:データを取れるツールを活用しつつ、それを運用に乗せる

では実際に、初回接触を計測するには、どのような設計をすれば良いでしょうか? まず、初回接触を何らかの形で記録できるツールを使う必要があります。 MAツールのデフォルトの機能を使うか、自動化フローなどを組み合わせることで、初回接触施策を1つの項目に持たせます。

値については、「セミナー」「ホワイトペーパー」ではなく、「2/28開催のGA4についてのセミナー」「SEO初心者向けホワイトペーパー」のように、細かい単位でデータを入れておくのがおすすめです。 命名規則を定めておくと、後で分析がしやすくなります。こちらについては、後ほど応用編で詳しくご説明します。
マーケティングメンバーに初回接触の記録方法を周知して、運用開始です。

最終接触:商談作成者が入力できるようなオペレーションを作る

最終接触施策が何であるかは、最終的には商談作成者(ISまたはFS)が目視で確認するのが最も確実です。 その理由は、リードが商談作成の直前に複数の施策に参加していたとき、どちらの施策の成果として評価するのか?という部分に、人為的な判断が入る余地があるからです。

例えば「セミナーを開催し、その時のアンケート結果をもとにセミナー参加者に架電した。しかし一部の人はセミナー終了後にサービス資料をダウンロードしていたので、その施策が直前施策として評価された」ということが起こり得ます。 この時「セミナー」と「サービス資料請求」のどちらを最終接触施策として記録したいかは、マーケティング・ISの方針次第です。機械的に直前の施策を取れば良い場合はサービス資料として記録しますが、「セミナーの成果としてカウントしたい」という場合はセミナーを直前施策とします。

こちらはマーケティング・ISチームで話し合って判断してもらうため、自動で「商談作成前の直前施策」が入るような項目を作っておき、必要に応じてISがSFA/CRMなどの画面上から簡単に修正できるようなオペレーションにしておくのがおすすめです。 (ここの修正が複雑だとIS作業に漏れが生じやすくなるため、なるべく簡単にすることがポイントです)
ISメンバーに最終接触の記録方法を周知して、運用に乗せます。

オペレーションに抜け漏れがないかチェック

初回接触・最終接触を記録する仕組みが作れたら、抜け漏れを検知できる仕組みを作ります。
例えばシステムのエラーや設計時の想定ミス、またメンバーの作業忘れなどにより、入るべき値が入っていないことが起こり得ます。
「気づいた人が直す」ではなく、責任者を立てて定期的にチェックする体制を整えます。 こうすることで正確なデータが貯まっていき、分析を始めることができる状態になりました。

集計し、分析する

あとは、SFA/CRMのレポート機能を使ったり、BIツールとつないだりして、貯まったデータを集計するだけです。 データの持ち方を設計してあれば、ここで悩むことはありません。

応用編:施策カテゴリ、商材ごとに集計して見られるようにする

こちらは、まず基本の実践編ができてからで良いかと思います。

先ほど、1つ1つの施策単位で記録していくと書きましたが、これを「施策カテゴリ」「商材」ごとに集計すると、より比較に役立ちます。 そのために、後から集計できるように命名規則を整えたり、施策にタグづけをしたりします。

例えば下記のルールを作るとします。

  • 施策カテゴリを施策名に含める
  • 「ドリア&グラタン」商材に関わる施策では、施策名に「DG」という文字列を入れる

集計する際、初回接触施策に

  • 「DG」「セミナー」という文字列が含まれている商談
  • 「DG」「ホワイトペーパー」が含まれている商談

上記をそれぞれグルーピングすれば、「ドリア&グラタン」商材のマーケティングにおいて、「セミナーからの集客」と「ホワイトペーパーでのリード獲得」のどちらがより商談作成・受注に効果的だったのかを知ることができます。 このように、比較したい区分に合わせて、計測・集計できるようなデータの持ち方をしておきましょう。

おわりに

このような仕組みで、リードの初回接触施策〜最終接触施策の計測を運用に乗せています。
貯まったデータを分析することで、「多数のリードを獲得できるが、受注につながらない施策」ではなく「商談・受注につながる施策」を評価し、そこに予算や工数を投入できるようになりました。 (また、ここでは詳しく触れませんが、初回接触施策の日付と商談作成日・受注日を比較することで、リード獲得から商談化・受注までのリードタイム計測にも役立っています)

最も重要だったのはマーケティングチームとの連携

何かを分析したい…という話がマーケターから上がってきた場合、大切なのは実装に取り組む前に、設計段階でマーケティングチームと「何のために、どのような計測がしたいのか」を徹底的に話し合うことです。 現場に合った設計でなければ運用に乗りません。密なコミュニケーションを取れる関係を築くことで、設計や運用がスムーズになります。

PLAN-Bでは、このようなマーケティング活動の最適化について、セミナーを行っていることもあります。
BtoBビジネスの「収益最大化」に欠かせないレベニューオペレーションとは | 株式会社PLAN-B

また、PLAN-Bではこのように、開発以外の業務にあたるエンジニアも在籍しています。MarketingOpsの取り組みについて、ご興味がおありの方にはこちらの記事もおすすめです。