
【5分でわかる】GTM(Googleタグマネージャー)の設定方法
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2025.02.03
更新日:2022.12.23
公開日:2017.09.04
峰松さんは大手メーカーで商品企画を経験後、老舗の石鹸会社である木村石鹸でマーケティング室を1人で立ち上げ、さまざまなヒット商品を生み出しました。今回は、峰松さんが現在一緒に仕事をしている新日本カレンダー株式会社の事例を伺いながら峰松さんが考える商品企画方法を紹介します。
――率直にお聞きしますが、商品企画をする上で峰松さんが1番大切にされていることは何でしょうか。
峰松氏:一言で言い切ると、「きちんと売れる物をつくる」ことです。商品は消費者に認められ、その対価としてお金をいただいて、初めて商品になります。アイデアは良くても、売ることができなければプランナーやマーケターに価値はないです。そういう意味だと、このプロジェクトもプレローンチは成功しましたが、本ローンチはこれからなので、まだ胃が痛いです。ちなみに嫌いな言葉は「在庫」です(笑)。
普通のメーカーだと、社内で長いあいだ案を練って新商品を作るのが一般的です。私が以前働いていたメーカーでも、たくさんデータを買ったり、消費者インタビューをしたりするところにお金をかけていました。ただ、このやり方ではあまり消費者の本音は出てこないんです。
――データからは、消費者のリアルな声が得られないということですね。
峰松氏:もちろんデータから見えることも沢山あります!数字は嘘をつかないので。ただ、今は時代の変化のスピードが早いので、データとして露呈してくる過去の数字を見ただけでは大ヒット商品は生まれにくいと思いますね。また、消費者の声を聞くために消費者インタビューをする方法も一般的ですが、消費者に直接「何が欲しいですか?」「何に困ってますか?」と聞いても正解は出てきません。
――それでは、消費者の本当の声に耳を傾けるためには、どのような手段をとる必要があるのでしょうか。
峰松氏:予算や解決しなければならないビジネス上の課題にもよりますが、今回のプロジェクトでは「作るところからお客様と一緒に作る」とか、「作る過程をお客様に見せてしまう」といったことを意識して商品企画をしています。なるべく本物に近い状態のものを買ってくれた人たちに、「何が良かったのか」「何がダメだったのか」を聞きながら商品を作れば、消費者の声を反映させた商品ができるのではないでしょうか。
ゆとり部 : http://nk-yutori.com
――具体的に峰松さんがどのように商品開発をしているのか、教えていただけますか。
峰松氏:はい。今回は、老舗のカレンダー会社である新日本カレンダーさんと一緒にやらせていただいているプロジェクトで説明しますね。私が新日本カレンダーさんと一緒に仕事をさせていただくことになったのが、去年の12月なのですが、そのとき既に、赤ちゃんが生まれてからの日々を一緒に数える「赤ちゃんひめくり」を作ったらどうかという案が出ていました。
――素敵なアイデアですね!
峰松氏:そうなんです。私もすごくいいなと思いました。ですが、このアイデアを考えたメンバーの中には、子供がいる人は誰もいませんでした(笑)。実際に赤ちゃんがいる人達がこの商品を買うかどうかは、赤ちゃんがいない私達には分かりません。また、「どうやって知ってもらうのか」という売り方の部分が白紙の状態でした。なので、売る前にたくさんの人にリーチして、かつ商品アイデアのセンスチェックをする方法はないかと思ったんです。そこで「赤ちゃんひめくり」に匹敵するアイデアをあと2つ出して、実際に商品化するものを決める総選挙を行ったら、どちらも実現できるのでは、という提案をしました。
――消費者に商品化するものを実際に選んでもらうキャンペーンですね、面白いです。ただ、このやり方はメーカーの方からすると抵抗があるかもしれませんね。
宮崎氏:おっしゃる通り、最初はこのやり方を提案されたときは怖かったですね。最終製品として出来上がって初めてお客様に出すというのが、僕達の常識なので。でも、カレンダーが売れなくなっている現状を打破するには新たなアイデアが必要だと思ったので、峰松さんが考えるやり方でやってみることにしたんです。
――消費者から人気の商品を確かめるテストは、どのような方法で行ったのですか。
峰松氏:最初は、ランディングページを3つ作って広告配信をしようと思っていたのですが、話を進めていくうちに新日本カレンダーさんがフォロワー数が10万を超えるアカウント(@543life)を運営していることが分かったんです。これだけフォロワーがいれば、広告を配信しなくても意見が十分集まるだろうと思い、「Twitterでテストするなら何ができるか」を考えました。
――10万フォロワー超えですか。相当な数ですね。
峰松氏:SNS担当の方は、毎日決まった時間に統一性のあるコンテンツを5年間投稿し続けていたみたいなんです。地道にコツコツと運用してきた成果が、数字に現れていますよね。本当にすごいと思います。商品化するものを決めるために、私達は3つの商品案のコンセプトをそれぞれ漫画にして、新たに作成したゆとり部のTwitterアカウント(@nk_yutori)で投稿しました。そして、いいねやリツイートの数を見て商品化するものを決めることにしたんです。
老舗カレンダー会社のゆとり世代チームが考えた、
— 新日本カレンダーゆとり部 (@nk_yutori) 2017年2月20日
新しい日めくりカレンダー3案
【赤ちゃん日めくり】
【カップル日めくり】
【やってみよう日めくり】
をツイッターでリアルテストする#新日本カレンダー総選挙 実施中。#RTが多かったものを商品化 します! pic.twitter.com/YY35l7P1Vi
【赤ちゃん日めくり】
— 新日本カレンダーゆとり部 (@nk_yutori) 2017年2月20日
赤ちゃんとの毎日を数える日めくりです#RTが多かったものを商品化#新日本カレンダー総選挙 pic.twitter.com/knenKDeBEL
【カップル日めくり】
— 新日本カレンダーゆとり部 (@nk_yutori) 2017年2月20日
お互いの魅力を再発見する日めくりです#RTが多かったものを商品化#新日本カレンダー総選挙 pic.twitter.com/m3AHL0OXKJ
【カップル日めくり】
— 新日本カレンダーゆとり部 (@nk_yutori) 2017年2月20日
お互いの魅力を再発見する日めくりです#RTが多かったものを商品化#新日本カレンダー総選挙 pic.twitter.com/pSAT7TtZ8F
【やってみよう日めくり】
— 新日本カレンダーゆとり部 (@nk_yutori) 2017年2月20日
日常に小さな気づきをくれる日めくりです#RTが多かったものを商品化#新日本カレンダー総選挙 pic.twitter.com/0zX9BA6ovV
峰松氏:最初は、漫画に表紙のデザインも入れていたのですが、そこで好き嫌いが出てしまうかもしれないので、取り除きました。純粋にコンセプトだけで判断してもらえるように、商品のデザインなどは入れず、コンセプトの中身のみが伝わるような漫画にしてもらったんです。10万フォロワー超えのアカウントにリツイートしてもらえるとはいえ、どれだけ反応があるか不安だったのですが、結果的にたくさんのいいねやリツイートが集まりフォロワー0人のアカウントが、3ツイートしただけで100万以上リーチしました。
――たった3ツイートで100万以上のリーチですか!ものすごくたくさんの方に見てもらうことに成功したのですね。実際にアンケートをした結果、何が選ばれたのですか。
峰松氏:1番反響があった「カップルひめくり」を商品化することにしました。このカレンダーは、毎日1問質問が書かれていて、それにカップルで答えていくというもの。商品化が決まってから会議をする中で、「カップルだけでなく、友達や兄弟にも使ってもらえたい」という話になり、商品名を「ふたりひめくり」に変え、商品化に向けて動き出すことにしました。
――商品化するものが決まった後は、どのように商品を作っていったのですか。
峰松氏:「ふたりひめくり」は、アイデア的には面白いけど、こういう新規性のある商品って、使い方を普及させるのが本当に難しいんですよ。周知させるのが難しいし、商品自体も「本当にこの形でいいのか?」とか「質問もこれでいいのか?」という不安がありました。だから消費者に聞いて一緒に作ろうという話になったんです。本当はカレンダーなので、365日分あるんですけど、1ヶ月版のお試しサンプルを作って実際に使ってもらって意見をもらい、それを元に商品を作ろうということにしたんです。1000人に配りました。
――1000人ですか!それだけの量をどうやって配ったのですか。
峰松氏:頑張ったんです(笑)。タダで貰えるといっても、いらないものだったら使ってくれないじゃないですか。1000人にサンプルを配るためにやったのが、異なる3つの層にリーチする施策です。
この3つです。しおたんさんに書いていただいた記事(http://milieu.ink/interview/yutori)もバズりましたし、Twitterアカウントからの流入がとても多かったので、サイトページを通じてたった3日で1000人に配ることができました。
――ものすごく戦略的にやられていたんですね。実際にサンプルを使った人からはどうやって感想を集めたのですか。
峰松氏:質問の下に「#ふたりひめくり」というハッシュタグをつけて、お試しサンプルを使用している様子をリアルタイムでTwitterに気軽に投稿してもらえるようにしたのが1つ。
夫婦で #ふたりひめくり
— Naomi Nonomura (@na03k) 2017年7月11日
Day 25-28
Day 26 毎晩寝る前に今日も1日良い日だったなと思って寝るんだけれども、その日の幸せについては具体的に振り返っていないなぁって思った。 pic.twitter.com/vkuJpW6LoW
峰松氏:もう1つは、アンケートフォームにご回答いただく形でリアルな声を集めました。アンケートにお答えいただけたのは、使用前は必須だったので1000人、使用後は300人くらいですね。「リアルなデータを集められた」というのはもちろんあるのですが、皆さんからの自由記入欄のコメントがものすごく長文で、かつ温かくて。ここだけの話、新宿の喫茶店でひとり泣きました(笑)。
――商品を作る前にこれだけ消費者の声を集められたのは大成功ですね。実際に挙がった声を活かして、内容を変更した箇所はあるのですか。
峰松氏:相当変更を加えました(笑)。例えば、「1日でもめくれない日があると罪悪感を覚える」という意見が結構挙がったので、週に1回「こんな使い方がありますよ」という使い方の提案や、実際に1ヶ月使ってくださった方の体験エピソードを入れるなど、質問の他にちょっと一息つけるコンテンツを作ることにしたんです。新たに50個近くのコンテンツを作るので大変ですが、私達が考えてもみなかった使い方をしている人もいるので、そうした新たな発見もコンテンツ化したら面白いなと思っています。
――どのような発見があったのですか。
峰松氏:30日目が「何か言いたいことはありますか?」という質問なのですが、そこでプロポーズをした人がいるんですよ!ふたりひめくりを使って結婚するなんて、誰も想像してませんでしたよ(笑)。あとは、みんなが毎日必ず見るようにトイレに置いている家庭もあるとか。そういった使い方をTIPSとしてカレンダーに加えたら、もっと楽しいものになりそうですよね。
――消費者のリアルな声を聞けたからこそできた改良ですね。
峰松氏:メーカーなので試作品をスピーディーに低コストで作れるのは強みですね。最初は広告を回すことも考えていましたが、SNSの運用がしっかりされていたので、リーチコストを最小限に抑えながら、同時にブランディングもできました。SNSがしっかり運用できていると、商品開発にも活かせることが伝わる事例ですよね。Twitterを活用して商品を作る過程を見せたり、実際に消費者に使ってもらい感想をもらったりすることによって、消費者が求めるものが分かるだけでなく、徐々にファンが生まれていきます。
商品の発売は11月なので、できる限り消費者の声を反映させた良いものを作るようにゆとり部一同頑張っていきます!!今回のように商品企画をゼロの状態からやらせていただくことは普通なかなかないですし、何かしたいと思ったときに、デザイナーさんやSNS担当の方が近くにいる環境はありがたいなと思ってるんです。「絶対こうしたら上手くいくのに!」と長年思っていた仮説を信じてやらせてくれた新日本カレンダーさんには、本当に感謝しています!
――宮崎さんは、これまで峰松さんと一緒に仕事をしてきて、いかがですか。
宮崎氏:これまで自分たちがやってきた商品開発とは全く違うやり方だったので、最初は不安でした。ですが、コンセプトテストを実施したりサンプルを配ってアンケートを集めたりと、峰松さんが考えるやり方がことごとく成功しているのを見て、とても頼もしいと感じながらお仕事をさせていただいています。
エンドユーザーの反応を見ながら商品開発をすることは今までなかったので、とても楽しく商品開発ができていますね。実は採用方面にも良い影響が出ていて、この取り組みを見てうちの会社に入りたいと言ってくれた方が新卒として入社してくれることも決まったんです。本当にありがたいです。
――最後に、商品開発に携わる方に向けてメッセージをいただきたいです。
峰松氏:商品開発の現場を見ていると、 クリエイターや職人の方はつくることに精一杯で、知ってもらうこと、売ることにコミットしない人が多いです。ビジネスサイドの人は、手法にとらわれすぎてて、いま消費者が欲しいものを作れていないケースが多い。そういった方に「こういうやり方もあるんだ」ということを知っていただけたら嬉しいですね。
スピード感と柔軟な動きが求められるので、大企業よりは、どちらかというと中小企業に合っていると感じています。一見中小企業は資金面でも大企業と比べて不利なように思えますが、消費者のニーズが細かく、分かりにくくなってきている今こそ、ニッチ市場を攻めることができる小さな組織に追い風が吹いています!
峰松さんが実践している商品開発法は、まだ世の中であまり実践されていません。
商品企画とWebマーケティングは一見すると離れているように見えますが、上手く活用することによって、消費者の声を反映させた「真にユーザーファーストな」商品を生み出すことができるのです。
現状の商品開発に課題を感じている企業の方は、ぜひ今回紹介した事例を参考にして、新商品を開発してみてはいかがでしょうか。