【専門家コラム】ZMOTの構造が変わる – 「AMOT」と「ダークファネル」から読み解くAI時代の意思決定

【専門家コラム】ZMOTの構造が変わる – 「AMOT」と「ダークファネル」から読み解くAI時代の意思決定

Webマーケティングの世界において、ユーザーが商品を知り、購入に至るまでの意思決定プロセスは、ここ数年で急激に「見えにくく」なっています。生成AIもまたそのプロセスに組み込まれ、購買行動に大きな影響を及ぼしているものの、その影響は測りにくいのが現状です。

本稿では、AIとの対話が意思決定プロセスのどこに組み込まれているのか、それがもたらす影響度と計測が難しい理由を整理し、私たちが今後取るべきアクションを提示します。

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    従来の「ZMOT」~意思決定プロセスを定義した不変のモデル~

    2011年、Googleは「ZMOT(Zero Moment of Truth)」という概念を提唱しました。これは、消費者が店頭(FMOT:First Moment of Truth)で商品を手に取る前に、ネット検索で意思決定を済ませているという事実を明らかにしたものです。

    それまでの「購買刺激(Stimulus)→ 店頭(Shelf)→ 体験(Experience)」という直線的な流れの間に、「検索による情報収集」という第0の瞬間が加わったのです。調査によれば、消費者の84%がこのZMOTによって意思決定を左右されているとされています。

    新たなフェーズ「AMOT」~「ZMOT」にAIとの対話が加わった~

    しかし、生成AIが登場した現在、このZMOTの体験は大きく変わろうとしています。

    これまでは「検索」をした後に、大量のWebページから自分に合う情報を自力で探すという、探索コストの重い体験が一般的でした。一方、AIとの対話では、ユーザーの曖昧な悩みから、自分に最適な3つ程度の候補まで一気に絞り込まれた状態にたどり着くことができます。

    PLAN-Bでは、このAIへの相談によって購買候補や判断軸が形成される瞬間を、「AMOT(AI Moment of Truth)」と呼んでいます。

    AMOT(AI Moment of Truth)

    「AMOT」という名称は、一種のレトリック(修辞的表現)です。

    本質的には「ZMOTという広義の情報探索プロセスの中に、AIとの対話が組み込まれた」と捉えるのが正確でしょう。しかし、あえて個別に名前をつけるのは、この「AIへの相談」を制すること、すなわち「AIの回答に自社が選ばれる状態を作ること」が、現代のマーケティングにおいて決定的に重要だからです。

    PLAN-Bの独自調査によると、生成AI利用ユーザーのうち、約4割がAIとの対話をきっかけに商品の決定を決めたことがあると回答しています。この調査は、25年6月時点のものなので、26年4月執筆現在は、AIとの対話をきっかけとした購買経験の割合も、より大きくなっているだろうと推定されます。

    関連記事:【調査】生成AI利用者の4割が「AIきっかけ」で購買を経験。生成AIとの対話から始まる、新たな購買行動の実態が明らかに

    AIによる効果は計測が難しい

    AMOTの最大の特徴は、その効果計測が極めて難しい、いわゆる「ダークファネル」にあるという点です。

    AI検索対策(LLMO)においてよく挙げられる指標には、以下の3つがあります。

    • 「流入」: AI回答からユーザーが直接サイトへ訪問すること。
    • 「参照」: AIが回答の根拠として自社サイトを確認すること。
    • 「言及」: AIの回答テキスト内に自社ブランド名が出現すること。

    このいずれもが、計測が難しい状況です。

    LLMOの成果指標

    「流入」の計測においては、AI回答内のリンクを直接クリックしてもリファラー(参照元情報)が正しく引き継がれず「Direct(直接流入)」扱いになることが多くあります。したがって、GA4などの計測ツール上で把握できるAI経由の流入は実態よりもずっと少なくなってしまう傾向があります。

    また、そもそもAIはリンクが並ぶ送客装置ではなく、ブランドにとっての露出装置です。ユーザーはAIでブランドを知り、納得した後、日を改めて「指名検索」で流入してくることなども想定できます。その場合、数値上は「Organic Search(自然検索)」として処理されてしまいます。

    AIがブランドにとっての露出装置であることから、AI検索対策における主要な指標は、AI回答上の露出としての「言及」やその情報源としての「参照」であると考えられます。これらについても、AIの回答は都度変化するため、厳密な把握は不可能です。そのため、外部ツール等を用いた「推定データ」に頼らざるを得ないのが現状です。

    とはいえ、何の指標も見ずに対策を講じることはできないため、推定だったとしても「言及」や「参照」を確認することは重要であると言えます。

    したがって、「見えているもの」から「見えていないもの」を推定しながらPDCAを回すべきなのがAI検索対策であると考えられます。

    確実に存在するAI起点の購買行動

    当然ながら、「見えないこと」は「起こっていないこと」を意味しません。

    自社(PLAN-B)の事例を紹介しましょう。GA4などの計測ツールで見ると、26年3月度時点でAIツール経由のコンバージョン(CV)は、自然検索全体のわずか2%程度にすぎませんでした。しかし、お問い合わせフォームで「PLAN-Bを知ったきっかけ」を直接聞くと、同期間においてなんと15%ものユーザーが「AIにおすすめされて」と回答しています。

    この乖離こそが、AIとの対話がダークファネルにあることの証拠です。計測ツールの「見えている」数値だけを追っていると、この15%の顧客接点を見落とし、投資判断を見誤ることになります。

    まとめ

    AI時代のマーケティングにおいて、私たちは「数値化できる世界」の外側を見る必要があります。

    まずは、皆さんのエンドユーザーに直接聞いてみてください。「この製品を知ったキッカケにAIとの対話がありましたか?」と。アンケートやサンクスページでの設問追加から始めるのがよいでしょう。より深く顧客の意思決定プロセスを理解したければ、デプスインタビュー(1対1の深掘り調査)をおすすめします 。

    もし、「自社でそこまで調査のリソースが割けない」「AIダークファネルをどう攻略すべきか具体的な戦略がほしい」という場合は、ぜひPLAN-Bにご相談ください。計測できない領域を可視化し、次の打ち手を共に考えさせていただきます。

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